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<スズケンDIアワー> 平成20年5月8日放送内容より スズケン

ウイルソン病の治療薬 酢酸亜鉛水和物


東邦大学医療センター大橋病院第二小児科 講師
清水 教一

icon ウイルソン病の治療

 現在、わが国におけるWilson病の治療は銅キレート薬と低銅食により行なわれています。銅キレート薬は、体内に蓄積した銅を尿中より体外に排泄させます。第一次選択薬は、D-ペニシラミンです。D-ペニシラミンは、1956年に導入されて以来、Wilson病治療の中心をなしてきました。優れた除銅効果を有し、現在も多くの患者さんが服用しています。最大の欠点は、副作用が多いことです。もう一つの治療薬は、塩酸トリエンチンです。D-ペニシラミンが副作用のために使えなかったり、十分な治療効果がみられない時に使用する第二次選択薬です。本薬剤の長所は、副作用が少ないことと神経症状に対する治療効果が高いことです。

亜鉛の作用機序

 そして、もうひとつのWilson病治療薬が亜鉛製剤です。亜鉛製剤には酢酸亜鉛、硫酸亜鉛あるいはグルコン酸亜鉛があります。欧米ではすでに認可され使用されています。亜鉛製剤のWilson病に対する作用機構は、腸管からの銅の吸収阻害であると考えられています。亜鉛は腸管粘膜上皮細胞において金属キレート化作用を有する蛋白であるメタロチオネインの産生を誘導します。メタロチオネインは特に銅との親和性が高いため、食事中の銅と優先的に錯体を形成して腸管粘膜細胞内にとどめます。そして、これらの細胞の剥落とともに糞便中に排出されます。その結果、亜鉛製剤は食事中の銅が血液中へ移行するのを阻害します。また、亜鉛は肝細胞中のメタロチオネインの産生も誘導し、肝細胞中に蓄積した銅と結合し無毒化することにより、肝庇護作用を発揮すると考えられています。投与量は、成人では亜鉛として1日75〜150mg、小児では1日体重あたり3〜5mgを使用します。これを1日3回ないし2回に分け、食前1時間あるいは食後2時間に内服します。食事中の繊維質が亜鉛の吸収を妨げるため、食間空腹時の服用が望ましいと考えられています。
 酢酸亜鉛の副作用として発現頻度が高いものは、胃部不快感や悪心などの消化器症状です。しかし、これらの症状は服薬を継続できる程度のものであることが多いようです。また、臨床検査にては、リパーゼとアミラーゼの上昇が高い頻度でみられますが、その機序は、非臨床試験の結果から亜鉛による膵酵素分泌促進によるものと考えられており、投与を続けていると次第に低下することが報告されています。

亜鉛薬の使用方法と利点

 亜鉛製剤は、欧米では発症前型症例に対しては単独で、肝型症例の初期治療では単独あるいは塩酸トリエンチンとの併用で第一次選択薬として使われています。神経症状を呈する症例の初期治療では、亜鉛の除銅効果が出現するのにある程度時間がかかることもあり、塩酸トリエンチンあるいはテトラチオモリブデートと併用で用いることが必要とされています。病状が安定している症例に対しては、いかなる病型に対しても亜鉛製剤単独での治療が推奨されています。
 我が国においては、酢酸亜鉛が亜鉛製剤として承認されました。その適応症例は臨床症状ならびに検査結果が安定している治療維持型、ならびに発症前型の症例です。亜鉛薬の長所は、重篤な副作用がほとんどないことと厳密な低銅食療法が必要ないことです。なお、亜鉛薬投与中の治療効果の指標は尿中銅排泄量の低下です。管理の指標としては、尿中銅排泄量を50〜125μg/日(24時間尿)あるいは0.1μg/mg creatinine以下(スポット尿)に維持することが良いと考えられます。

 以上、Wilson病と亜鉛製剤について簡単に解説しました。酢酸亜鉛はWilson病治療に有用な薬剤であり、その発売によってWilson病の治療の幅が広がることは間違いありません。銅キレート薬と亜鉛薬のそれぞれの作用機序と特徴を知ることにより、各々の症例にあった治療法を選択することができるようになると考えられます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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