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<スズケンDIアワー> 平成20年5月23日放送内容より スズケン

日本薬学会第128年会について


大阪府立健康科学センター 健康生活推進部長
中村 正和

icon バレニクリンの有効性

 新しい禁煙治療の薬剤として、バレニクリンという内服薬が2008年の4月に保険薬として薬価収載され、保険による禁煙治療において使えるようになりました。この薬剤は、禁煙治療を目的に開発された初めての内服薬です。バレニクリンは脳内報酬回路においてニコチンが結合して依存症を引きおこすα4β2ニコチン受容体に選択的に作用して禁煙の効果を発揮します。バレニクリンの薬理作用の特徴は2つの効果により禁煙率を高めます。第1の作用は、バレニクリンがニコチンの約半分程度の作用を有する部分作動薬であるため、喫煙しなくても、禁煙に伴う離脱症状を緩和します。第2の作用は、バレニクリンがニコチン受容体に結合して部分拮抗薬としても作用するため、たとえ喫煙しても、これまで喫煙した時と同じような満足感が得られなくなり、喫煙への逆戻りを防ぐ効果があります。

禁煙治療の薬剤の有効性

 この薬剤の有効性については、2007年のコクランレビューによると、バレニクリンの禁煙オッズ比はプラセボに比べて3.22倍有意に高く、ニコチン製剤の1.58倍、第1世代の内服薬であるブプロピオンの1.94倍に比べて、より高いオッズ比を示しています。なお、ブプロピオンは、もともと抗うつ剤として開発された禁煙治療薬で、多くの先進国で使用されています。
 バレニクリンとブプロピオンの有効性を直接比較した3編の研究成績によれば、バレニクリンの方が禁煙率が1.66倍有意に高いことが報告されています。また、ニコチンパッチと有効性を直接比較した最近の研究において、治療終了時点の禁煙率がニコチンパッチに比べて1.70倍有意に高く、禁煙に伴う離脱症状や喫煙した時の満足感を有意に抑制することが報告されています。
 わが国でも臨床試験が行われ、バレニクリンを服用すると、プラセボに比べて12週間の治療終了時点の4週間持続禁煙率が2.98倍、1年後の44週間持続禁煙率が1.81倍有意に高くなる成績が得られています。
 2007年のコクランレビューでは、薬剤別の有効性の成績をもとに、長期禁煙者を一人生み出すのに何人の喫煙者を治療すべきかを試算しています。それによると、バレニクリンの場合は8人で、ニコチン製剤の20人、ブプロピオンの15人に比べて少なく、より少ない治療人数でも長期禁煙者を生み出す効果が期待されます。また、喫煙者の約半数は早期死亡を起こすことがわかっており、バレニクリンの場合、16人に対して禁煙治療を行えば、早期死亡を1人減らすことができる計算になります。
 このように、本薬剤の有効性が優れていることから、アメリカではFDAにより優先審査の指定を受け、2006年8月から処方箋薬として使用されています。わが国では2008年1月に医療用医薬品としての承認がなされ、同年4月18日に保険薬として薬価収載されました。ただし、本剤が保険薬として使えるのは、外来診療で「ニコチン依存症管理料」を算定した場合に限られていますので、注意が必要です。ニコチン依存症管理料を算定するためには、各都道府県の社会保険事務局へ届出をして算定医療機関として登録されることが必要です。

 

提供 : 株式会社スズケン



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