<スズケンDIアワー> 平成20年6月5日放送内容より |
![]() |
|||
浜松医科大学臨床薬理学・臨床内科 教授
渡邉 裕司
そのような背景の中、最近シルデナフィルクエン酸塩が新たなPAHの治療薬(商品名レバチオ)として登場しました。もともとシルデナフィルは、勃起不全の治療薬として認可された薬剤ですが、その作用機序は、ホスホジエステラーゼ5型(以下PDE-5)とよばれる酵素を阻害することにより、血管拡張物質であるサイクリックGMPの分解を抑制し、血管弛緩反応を増強するというものです。PDE-5が存在する陰茎海綿体では、その弛緩が増強し、結果として勃起機能が増強されます。ところが、PDE-5は陰茎海綿体ばかりでなく肺血管にも豊富に存在することが知られており、このことからシルデナフィルが勃起不全に対する治療効果と同様に、肺高血圧症の治療薬としても有効ではないかと期待されました。 この症例は、40歳の女性で、労作時の息切れと動悸を主訴とし、それまで経口プロスタサイクリン製剤ベラプロストを投与されていた原発性肺高血圧症例でした。50mgのシルデナフィルを経口投与し、30分後より徐々に肺動脈圧は低下しはじめ、投与90分後には肺動脈収縮期圧が80 mmHgから57mmHgへ、拡張期圧が38mmHgから31mmHgへ、平均圧は54mmHgから40mmHgへと低下しました。一方、シルデナフィル投与後も大動脈圧には有意な変化を認めず、心拍出量は15%増加し、肺血管抵抗は39%低下しています。本症例はシルデナフィルの長期投与開始後、短期間のうちに自覚症状の著明な改善を認めています。3ヶ月後に再度心臓カテーテル検査を行いましたが、初回検査時と同様の急性効果が保たれていることが確認され、7年後の現在も元気に外来通院を続けておられます。
|
||||
提供 : 株式会社スズケン | ||||
|