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<スズケンDIアワー> 平成20年6月5日放送内容より スズケン

肺動脈性肺高血圧症治療薬 シルデナフィル


浜松医科大学臨床薬理学・臨床内科 教授
渡邉 裕司

icon 新しいPAH治療薬の登場

PDE-5阻害薬シルデナフィルの血管拡張作用

 そのような背景の中、最近シルデナフィルクエン酸塩が新たなPAHの治療薬(商品名レバチオ)として登場しました。もともとシルデナフィルは、勃起不全の治療薬として認可された薬剤ですが、その作用機序は、ホスホジエステラーゼ5型(以下PDE-5)とよばれる酵素を阻害することにより、血管拡張物質であるサイクリックGMPの分解を抑制し、血管弛緩反応を増強するというものです。PDE-5が存在する陰茎海綿体では、その弛緩が増強し、結果として勃起機能が増強されます。ところが、PDE-5は陰茎海綿体ばかりでなく肺血管にも豊富に存在することが知られており、このことからシルデナフィルが勃起不全に対する治療効果と同様に、肺高血圧症の治療薬としても有効ではないかと期待されました。
 海外ではシルデナフィルのPAHに対する臨床試験が実施され、その結果に基づき2005年6月に米国で、2005年10月に欧州でPAH治療薬として承認されています。また、わが国でも本年(2008年)1月にPAH治療薬としての承認が得られました。私たちは2001年より浜松医科大学で肺高血圧症に対するシルデナフィルの臨床研究を開始し、シルデナフィル50mgの経口投与で、急肺血管抵抗の20%以上の低下という急性効果が認められた症例に対して長期投与を行っています。これまでに14例でシルデナフィルの長期投与を行い、平均観察期間は5年を越え、すでに7年以上の長期投与例が存在します。長期投与例の内訳は男性2例、女性12例、肺高血圧症の原因別にみますと原発性肺高血圧症が5例、膠原病に合併する肺高血圧症が9例です。このうち、お一人の方が他院へ転院後、シルデナフィルを中止され、お亡くなりになっていますが、その他の方は健在であり、5年生存率は90%を越えています。
 ここに、われわれが経験した代表的な例をご紹介します。

原発性肺高血圧症の血行動態に及ぼすシルデナフィルの作用

 この症例は、40歳の女性で、労作時の息切れと動悸を主訴とし、それまで経口プロスタサイクリン製剤ベラプロストを投与されていた原発性肺高血圧症例でした。50mgのシルデナフィルを経口投与し、30分後より徐々に肺動脈圧は低下しはじめ、投与90分後には肺動脈収縮期圧が80 mmHgから57mmHgへ、拡張期圧が38mmHgから31mmHgへ、平均圧は54mmHgから40mmHgへと低下しました。一方、シルデナフィル投与後も大動脈圧には有意な変化を認めず、心拍出量は15%増加し、肺血管抵抗は39%低下しています。本症例はシルデナフィルの長期投与開始後、短期間のうちに自覚症状の著明な改善を認めています。3ヶ月後に再度心臓カテーテル検査を行いましたが、初回検査時と同様の急性効果が保たれていることが確認され、7年後の現在も元気に外来通院を続けておられます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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