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<スズケンDIアワー> 平成20年6月5日放送内容より スズケン

肺動脈性肺高血圧症治療薬 シルデナフィル


浜松医科大学臨床薬理学・臨床内科 教授
渡邉 裕司

icon シルデナフィルの臨床成績

 最近、浜松医科大学を含む全国の6医療機関の協力によりシルデナフィル使用成績がまとめられましたので、紹介させていただきます。
 この調査は、日本人におけるシルデナフィルの肺高血圧症に対する使用状況を把握し、その有効性および安全性を確認することを目的に行われ、112例と多くの症例の情報を収集し、評価しています。
 シルデナフィル投与開始時点の治療特性では、シルデナフィル単独症例は23.2%(112例中26例)、その他76.8%(86例)はPAHに適応を有する薬剤を1種類以上併用していました。投与量については低用量から慎重に投与を開始し、有効性と安全性を確認しながら増量し投与継続しています。投与期間は2年以上継続している症例が多く、有効性を維持し、安全性も忍容できることが推測されました。
 成人PAH患者における急性効果では、投与開始時および投与開始12週後のいずれにおいても血行動態に対する効果が確認されました。また、この時の全身血圧には低下傾向はみられるものの、肺動脈圧の低下に比較して影響は少ないものでした。一般的にPAHの薬物療法を行う際に重要視されるのは、肺血管への選択性ですが、これまでの報告と同様に今回の調査結果からも、シルデナフィルは全身血圧にほとんど影響を与えず、選択的に肺動脈に対して作用することが示唆されました。また、今回の調査から短時間での酸素運搬能の改善効果も示唆されており、これも以前の報告と合致するものと考えられました。

6分間歩行距離の経時的変化

 また、長期投与の成人および小児における結果は、患者背景や投薬状況が異なることから単純に海外のデータと比較することはできませんが、外国でPAH患者を対象に実施されたシルデナフィル第皿相試験での20mg群の結果と、6分間歩行距離の延長や、平均肺動脈圧や肺血管抵抗の低下などで類似する改善効果が認められました。また安全性においても海外臨床試験と同様に、血管拡張作用に起因する副作用が主であり、忍容性の高いことが確認されています。
 PAHは進行性の疾患で右心不全の進行の度合いが予後に最も影響することが知られていますが、近年の研究で、シルデナフィルが心筋保護作用を有することが報告され、さらに、血管平滑筋細胞の増殖を抑制することも報告されており、シルデナフィルはPAH治療に対して多くの利点を有していると考えられます。
 国内でPAHに対して適応が認められている薬剤は2系統3薬剤(すなわちベラプロスト、エポプロステノールおよびボセンタン)でしたが、NO/cGMP経路を標的としたPDE-5阻害薬であるシルデナフィルが加わることでPAH治療の選択肢がさらに広がると考えられます。
 今後の課題として、作用機序の異なるプロスタサイクリン製剤やエンドセリン受容体拮抗薬などとの組み合わせによる多剤併用療法の有効性を検証する臨床試験も必要でしょう。
 肺高血圧症は極めて予後不良で重篤な疾患であると認識されてきましたが、近年の急速な薬物療法の進歩は、肺高血圧症がコントロール可能な疾患となることを強く期待させるものです。

 

提供 : 株式会社スズケン



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