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<スズケンDIアワー> 平成20年6月19日放送内容より スズケン

アンジオテンシンII受容体拮抗薬イルベサルタン


横浜市立大学大学院病態制御内科学 教授
梅村 敏

icon イルベサルタンの腎保護効果

 さて、今回、本邦において発売される6剤目のARB、イルベサルタンはすでに世界76カ国で発売されています。

イルベサルタンとは

 活性型タイプのARBで、50〜100mgの一日一回の投与で高血圧症が承認効能疾患です。海外では糖尿病性腎症への適応もあります。これはイルベサルタンを用い、糖尿病性腎症を対象にした二つの試験結果によるものです。すなわちIDNT(Irbesartan Diabetic Nephropathy Trial)とIRMA 2(Irbesartan in Patients with Type 2 Diabetes and Microalbuminuria Study)です。

INDT

 IDNTは顕性腎症を有する2型糖尿病の高血圧患者に対し、ARBイルベサルタンまたはCa拮抗薬アムロジピンが降圧とは独立した腎保護効果を示すか否かをプラセボ群と比較検討した試験です。また、同時に心血管系イベント発症率を治療群間で比較しました。
 対象は、尿中蛋白排泄量が一日900mg以上で、血清クレアチニンが男性で1.2(女性は1.0)から3.0mg/dLの2型糖尿病で高血圧症の1715症例です。試験方法はランダム化二重盲検試験です。一次評価項目は、血清クレアチニン値2倍上昇、末期腎不全への移行、または全死亡です。イルベサルタンは一日75-300mg、アムロジピンは一日2.5-10mgの投与量です。
 結果は到達血圧値は実薬群に比べプラセボ群で平均血圧が3.3mmHg高値でした。実薬群間に差はなく、アムロジピン141/77mmHg、イルベサルタン140/77mmHgでした。一次エンドポイントはイルベサルタン群でプラセボ群、アムロジピン群に比べ、有意に低値でした。プラセボ群とアムロジピン群には差はありませんでした。死亡のリスクには3群間で差を認めませんでした。
 尿中蛋白量の減少率もイルベサルタンで33%と有意に大でした。
 二次エンドポイントの心血管系イベントの発症は3群間で差を認めませんでした。一方、イルベサルタン群で入院を要する心不全がプラセボ群より23%少なく、アムロジピン群では非致死的心筋梗塞がプラセボ群に比し41%少ないという結果でした。血圧で補正後もイルベサルタン群で認められた腎に対する良好な結果は変わりませんでした。
 以上より、イルベサルタンは2型糖尿病に伴う腎症の進行を遅延させ、腎保護効果を示しました。この効果は降圧効果とは独立したものでした。この結果は、同じNEJM誌に発表されたRENAAL試験とも一致し、2型糖尿病性腎症でのARBの腎保護作用を確立したきわめて重要な試験です。

IRMA2

 IRMA 2試験は、微量アルブミン尿(早期腎症)を呈する2型糖尿病の高血圧患者に対する、イルベサルタンの顕性腎症への進展抑制効果を検討した試験です。イルベサルタン一日150mgまたは300mgを投与し、プラセボ群と2年間比較したランダム化二重盲検試験です。
 対象は毎分20-200μgの微量アルブミン尿も持つ2型糖尿病590名です。
 一次評価項目は、顕性の糖尿病性腎症までの時間です。
 イルベサルタン300mgで5.2%、150mgで9.7%が一次エンドポイントに達し、これはプラセボ群の14.9%より有意に低値でした。血圧は各々141/83、143/83、144/83mmHgで有意差を示しました。
 尿中アルブミン量の正常化率はイルベサルタン群で多く、Remission(寛解)する患者の割合も増加させました。
 以上、イルベサルタンは微量アルブミン尿を有する2型糖尿病合併高血圧患者で、降圧効果とは独立した腎保護効果を示しました。

糖尿病性腎症におけるアンジオテンシンIIの作用

 以上のようなイルベサルタンの腎保護効果の生じるメカニズムは必ずしも100%明らかではありません。降圧作用に加え、腎内のアンジオテンシンUの作用をブロックして、輸出細動脈を拡張させ糸球体高血圧を抑制すること、さらに、糸球体基底膜の透過性の変化、メサンギウム細胞増殖抑制、炎症抑制作用などが考えられています。
 糖尿病性腎症はある程度、腎障害が進行すると元に戻れないというpoint(point of no-return)の存在が考えられていましたが、今回のIRMA 2、IDNTのエビデンスも含め、Remission(寛解)やRegression(改善)が生じることが証明されつつあります。イルベサルタンを含めたレニン・アンジオテンシン系の抑制と積極的な降圧による腎症の抑制の実現が望まれます。

icon おわりに

 以上をまとめますと、
(1) ARBは心臓、脳、腎臓での臓器保護効果や糖尿病発症抑制作用が多く報告され確立してきています。
(2) 新規に発売されるARBイルベサルタンは糖尿病性腎症でのエビデンスが有名です。糖尿病性腎症の微量アルブミン尿を呈する早期腎症を対象としたIRMA 2試験と、GFR低下が生ずる顕性腎症から腎不全期の患者を対象としたIDNT試験での、降圧を超えた腎保護効果が証明されています。糖尿病性腎症のRemission(寛解)、Regression(改善)の可能性は大きいと思われます。
 今後、続々と発表されてくるイルベサルタンを用いた臨床試験のエビデンスにも期待したい と思います。

 

提供 : 株式会社スズケン



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