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<スズケンDIアワー> 平成20年7月3日放送内容より スズケン

子宮内膜症に伴う月経困難症治療用低用量ピル製剤


東京大学附属病院女性診療科・産科・女性外科 講師
百枝 幹雄

icon はじめに

 本日は、先頃「子宮内膜症に伴う月経困難症」の適応を取得した日本で初めての「治療用低用量ピル製剤」である「ルナベル」について解説いたします。

有効成分

 本剤は黄体ホルモンとしてノルエチステロン1.0r、卵胞ホルモンとしてエチニルエストラジオール0.035rを含む卵胞・黄体ホルモン複合剤であり、いわゆる低用量ピルとして欧米をはじめとする諸外国で既に広く使われ、日本でも1999年に経口避妊薬として承認されたオーソM21と同一成分の製剤です。
 本日はまず、子宮内膜症とはどのような疾患であるか簡単に解説した後、自費診療で処方されていた経口避妊薬が新たに「子宮内膜症に伴う月経困難症」に対する保険薬として開発発売されるに至った経緯を説明いたします。そして、その臨床試験成績を中心に有効性と安全性を説明し、最後に子宮内膜症の治療において治療用低用量ピル製剤をどのように位置づけ、使っていくべきであるか、というガイドラインを提示いたしたいと思います。

icon 子宮内膜症の病像と治療

 子宮内膜症という疾患について解説いたします。子宮内膜症は、月経周期に伴って増殖・分化・剥脱を反復している子宮内膜が、子宮内腔以外の組織に発生する疾患です。主な症状は、月経困難症、慢性骨盤痛、性交時痛、排便痛などの疼痛症状と妊孕性の低下であり、特に子宮内膜症の好発年齢は20代から40代までの、女性の社会的活動性が最も高い年代と重なることや、その有病率は生殖年齢女性の約7%であると推定されることなどから、これらの症状は患者個人にとっても社会にとっても重大な影響を及ぼすことになります。
 その子宮内膜症に対する治療法は、薬物療法と手術療法のふたつがありますが、いずれを用いても子宮内膜症の再発率は30〜50%であり、この高い再発率のために少なくとも閉経期までの長期間の管理が重要となります。この長期管理における治療法の選択は、疼痛の性質や程度、年齢、挙児希望の有無、就労状況など、患者の個々の状況を詳細に考慮して決定され、原則はリスクやコストが低いものを優先することになります。したがって、子宮内膜症の疼痛に対する第1選択の治療法は、すべての年齢で挙児希望の有無にかかわらず使用できる鎮痛剤・漢方薬などの対症療法であります。一方、対症療法ではなく、いわゆる子宮内膜症治療薬の主流は、従来、ダナゾールとGnRHアゴニストであり、それぞれ短期的には非常に有効な薬剤であります。しかし、ダナゾールには血栓症や肝機能障害、GnRHアゴニストには更年期様症状、骨密度低下などのエストロゲン欠乏症状という副作用があるため、いずれも投与期間が6か月に制限されます。このような状況の中で、われわれ産婦人科医は、子宮内膜症を長期にかつ安全に管理する方法を模索してきたのです。
 これまでも卵胞・黄体ホルモン複合剤のうち、いわゆる中用量ピルは月経困難症にも適応を有しており、臨床の現場では月経困難症に対して使用されていましたし、経験的には子宮内膜症に伴う月経困難症にも有効であることが知られていました。経口避妊薬はGnRHアゴニストやダナゾールと比べると、安全に長期投与が可能であるため、鎮痛剤・漢方薬が無効な子宮内膜症症例に対する治療薬として見直されてきたのですが、それでも中用量ピルは血栓症や動脈硬化などのリスクにより長期投与は躊躇されてきました。中用量ピルのこのような副作用を軽減する目的で低用量ピルが開発され、欧米ではもともと経口避妊薬が普及していたこともあり、子宮内膜症の薬物療法における低用量ピルのシェアが30%以上となりました。本邦では1999年に低用量ピルが解禁になった以降、次第に子宮内膜症の薬物療法における低用量ピルのシェアが拡大し、最近では20%を超えるようになってきました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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