→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成20年7月17日放送内容より スズケン

関節リウマチ治療薬トシリズマブ


大阪大学大学院生命機能研究科免疫制御学講座 教授
西本 憲弘

icon 関節リウマチとは

 関節リウマチ(RA)は多発性の関節炎を主症状とする原因不明の全身性炎症性疾患です。炎症を起こした関節内では、滑膜細胞が増殖してパンヌスと呼ばれる組織が形成され、軟骨や骨を侵食するように破壊します。関節破壊が進行すると関節の機能が障害され、患者さんは生活の質(QOL)の低下を余儀なくされます。したがって、RA患者では、関節の痛みや腫れといった炎症症状を抑えるとともに関節破壊の進行を阻止する必要があり、そのためには、関節破壊が進む前の早期に治療を開始すること。そして、炎症を抑える作用と関節破壊を阻止する作用をあわせ持つ治療薬を使用することが重要です。
 従来、RAの治療には疾患修飾性抗リウマチ薬(いわゆる抗リウマチ薬)や免疫抑制薬、ステロイド薬、そして非ステロイド性消炎鎮痛薬が用いられてきましたが、それらを駆使しても十分な治療効果が得られないケースが少なくなく、前述の目標は理想に過ぎませんでした。そこに登場したのが生物学的製剤です。生物学的製剤は、培養細胞などの生物材料を用いて作製される医薬品の総称ですが、今日ご紹介するのは治療用のモノクローナル抗体、いわゆる抗体医薬です。生物学的製剤の登場により、RA治療が現実のものとなりました。
 わが国でRA治療に使用できる生物学的製剤には、欧米で開発された腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)の阻害薬とわが国オリジナルのインターロイキン6 (interleukin-6、IL-6)の作用を阻害する薬剤がありますが、本日は特に日本で開発され、日本初の抗体医薬となったトシリズマブについてご紹介します。

icon トシリズマブの特徴と作用機序

 トシリズマブの標的分子であるIL-6について説明します。

関節リウマチにおけるIL-6の役割を挿入

 IL-6はサイトカインと呼ばれる物質の1つですが、IL-6には免疫応答や炎症反応を調節する働きがあります。ところが、このIL-6が、身体の中で無制限に産生されると、さまざまな病気を引き起こします。関節リウマチの病態にもIL-6の異常産生がかかわっています。IL-6は滑膜増殖に不可欠な血管新生を促すとともに、破骨細胞の分化を誘導してRA患者における骨・軟骨破壊を引き起こします。また、IL-6は関節にとどまらず、血液中に流れこみ、発熱、全身倦怠感、体重減少、貧血などの全身症状も引き起こします。RA患者にしばしばみられるCRPや血沈の亢進、血小板の増加、免疫グロブリンの増加、さらにリウマトイド因子の増加といった検査異常もIL-6の過剰産生によるものです。実際に、RA患者においては、関節液や血清中でIL-6の増加が見られ、しかもRAの病勢と相関することが報告されています。トシリズマブは、このIL-6の受容体に結合して、IL-6の働きを特異的に阻害する薬で、RAの病態に基づいた理想的な治療薬です。
 トシリズマブはマウス抗ヒトIL-6受容体抗体を、CDR grafting法と呼ばれる方法によりヒト化した遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体です。この遺伝子組み換えによりマウスの成分が減り、ヒトに対し反復使用を行っても作用の減弱がなく、アレルギー反応もほとんど出現しなくなりました。また、薬の効果がより長く持続するようになりました。
 トシリズマブは点滴静注で使用しますが、体内での半減期は2、4、8mg/kgと使用量の増加により延長し、かつ、1回目より2回目、2回目より3回目と反復使用によっても延長します。そして8mg/kgのトシリズマブを2週毎に3回使用した時の半減期は約240時間と、ヒトの免疫グロブリンに近づきました。

 

提供 : 株式会社スズケン



1 2 3 次項へ