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<スズケンDIアワー> 平成20年7月17日放送内容より スズケン

関節リウマチ治療薬トシリズマブ


大阪大学大学院生命機能研究科免疫制御学講座 教授
西本 憲弘

icon トシリズマブの安全性

 安全性に関しては、第II相試験に参加された1例がEBウイルスの再活性化により亡くなられました。しかし、この症例はその後の検討から、トシリズマブ使用前から悪性リンパ腫であったことが明らかになりました。また、トシリズマブ治療導入前のリンパ球数が極端に低く、どのような感染症が発症してもおかしくない状態でありました。そこで、それ以後の臨床試験ではリンパ球数500/μL未満の症例に対しては除外基準が設けられ、それ以降、類似の症例は1例もありません。
 また、第V相のSAMURAI研究に見る有害事象の発生率は既存の抗リウマチ薬群の82%に対しトシリズマブ群で89%と有意な差を認めず、しかも殆どが中等度から軽度でした。実際には有害事象の項目として最も多かったのは上気道炎です。一方、重篤な有害事象は従来の抗リウマチ薬群で13%に見られたのに対し、トシリズマブ群は18%であり、その中には、肺炎3例(1.9%)、蜂窩織炎、帯状疱疹各1例(0.6%)などの感染症が含まれています。しかし、既存の抗リウマチ薬群でも肺炎2例(1.4%)帯状疱疹が1例(0.7%)あり、差はありませんでした。
 一方、検査データではトシリズマブ群において総コレステロール、中性脂肪の上昇など脂質代謝系の異常が見られました。しかし、LDLコレステロールだけでなく善玉のHDLコレステロールも上昇しており、動脈硬化指数に変化はなく、これに関連した心血管系イベントも認められませんでした。
 また、結核の発症に関しては、一連の臨床試験の中で、ツベルクリン反応によるスクリーニングや結核に対する予防内服を義務付けてはいないにもかかわらず、既存の抗リウマチ薬治療を行っている患者群に比べて有意な増加は見られていません。これもTNF阻害治療との大きな違いです。なお、悪性腫瘍の発症に関しては、正確な評価にはより多くの患者データを必要としますが、現時点で、一般のRA患者と比べて頻度に差は認められていません。
 以上より、トシリズマブの安全性は概ね良好であると言えます。ただし、トシリズマブは発熱や倦怠感などの症状、CRPなどの検査値を抑制するので、トシリズマブ使用時に、感染症の発見が遅れる可能性がありますので、感染症の早期発見と早期治療を心がけねばなりません。

icon トシリズマブ使用時の注意点

生物学的製剤による治療中の感染症

 トシリズマブ使用により、発熱、倦怠感などの症状がマスクされてしまい、重篤化して初めて見つかるケースがあります。患者さんにトシリズマブの特徴を十分に説明し、わずかな体調の変化であっても、自己判断せずに主治医に相談するように指導することが重要です。主治医は適宜検査を行い、早期発見につとめ、早期に適切な処置を行い、重症化させないことが重要です。感染症の合併があれば、その治療を優先します。また、妊娠に対する安全性も確立されていないため、現時点では妊娠を希望する患者には使用できません。

icon おわりに

 今後安全に配慮してトシリズマブを使用することにより、RA治療の選択肢がさらに大きく広がると思われます。しかし、すべての症例に有効というわけではないので、どのような症例に有効であるかを、治療前あるいは治療開始後の早期に予測できるような臨床パラメーターを明らかにする必要があります。そのことにより、真のリウマチ治療が確立できると思われます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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