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<スズケンDIアワー> 平成20年7月24日放送内容より スズケン

輸血による慢性鉄過剰症治療薬 デフェラシロクス


NTT関東病院予防医学センター 所長
浦部 晶夫

icon 体内における鉄の摂取と排出のバランス

 本日は、鉄過剰症の新しい治療薬についてお話致します。鉄は、私達が生きていく上でなくてはならない微量金属の中の代表的なものです。鉄は、通常は食物から吸収されます。また、一定量が便、尿、汗などとともに体外に排出されます。女性の場合は月経によっても鉄が失われます。健康な人ですと、毎日、約1mgの鉄が食事から吸収され、便、尿、汗などとともに毎日、約1mgの鉄が排出されます。月経のある女性はその分が多くなって、1日に約1〜2mgの鉄が失われますが、その場合は鉄の吸収もやや多くなり、1日に1〜2mgとなって、通常は私達の体内での鉄の収支は、釣り合っており、ほぼ±0 なのです。私達の体内にある鉄の約70%を占めるヘモグロビン鉄と、約30%を占める貯蔵鉄の間では、1日に約20mgの鉄の出入りがあります。すなわち毎日新しく作られる赤血球は貯蔵鉄から20mgの鉄を利用し、老化して壊される赤血球中の約20mgの鉄が貯蔵鉄に戻ります。このようにして私達の体の中の鉄はほとんど閉鎖系の回路の中でバランスがとれているのです。

icon 鉄過剰症の病態

 それでは、鉄過剰症とはどのような病態かといいますと、鉄代謝のバランスが狂って、体内に鉄が過剰に沈着する状態のことです。鉄過剰症は英語ではiron overloadといいますが、その他にヘモクロマトーシスあるいはヘモジデローシスという言葉も使われます。一般には、ヘモジデローシスは細網内皮系に鉄が沈着した状態を、ヘモクロマトーシスは鉄が臓器に沈着した結果、臓器障害を引き起こす状態のことを指しますが、あまり厳密な使い分けはなされていないようです。鉄過剰症はそれらを包括した用語です。鉄過剰症を疾患としてとらえる場合には、遺伝性の特発性ヘモクロマトーシスと、他に原因のある二次性ヘモクロマトーシスに分けられます。
 特発性ヘモクロマトーシスは白人に多い遺伝性の疾患で、十二指腸および小腸上部からの鉄の異常吸収が起こり、体内に鉄が沈着するのですが、日本人では稀です。二次性ヘモクロマトーシスは、鉄過剰症の中で、最も多いもので、例えば、サラセミアでは、無効造血のために、鉄の吸収が亢進して鉄過剰症になります。あるいは、難治性の貧血のために、輸血を繰り返している例などでも、鉄過剰症になります。実際にわが国で最も多い鉄過剰症は、頻回の輸血によるものです。鉄過剰症では、種々の臓器に鉄が沈着します。心臓、肝臓、膵臓などに鉄が沈着する結果、心臓に鉄が沈着すると心機能障害から心不全に、肝臓に鉄が沈着すると、肝の線維化から肝硬変に、膵臓に鉄が沈着すると、インスリンの分泌が障害されて糖尿病になります。したがって、輸血を繰り返す症例では、鉄過剰症になり、臓器障害に陥り、心不全や糖尿病などになることが多く、患者さんの予後を悪くしています。実際に鉄過剰症では心不全が死亡原因となることが多いのです。

 

提供 : 株式会社スズケン



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