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<スズケンDIアワー> 平成20年7月31日放送内容より スズケン

腎細胞がんの分子標的治療薬スニチニブリンゴ酸塩


京都府立医科大学大学院泌尿器外科学 教授
三木 恒治

icon sunitinibをfirst line therapyで用いた場合の有害事象

 前述のsunitinibをfirst line therapyで用いた報告における有害事象に関しては、sunitinib投与群に下痢、吐気など消化器症状に関するGrade 1-4の有害事象が約半数の症例に認められた。Grade 3-4に限ると、3〜5%の症例に認められた。Sunitinib特有の有害事象のひとつである疲労感に関しては、Grade 1-4の有害事象が51%の症例に認められ、Grade 3-4では7%の症例に認められた。その疲労感の原因のひとつである甲状腺機能低下症に関して、2007年にRiniらがsunitinib投与症例66例を検討し、報告している。85%のsunitinib投与症例に甲状腺機能低下症が認められ、中央値でsunitinib投与2コース目より認められたとしている。また、その30%の症例にホルモン補充療法が必要であったと報告している。sunitinib投与により、Grade 1-4の高血圧が24%の症例に、Grade 3-4の高血圧が8%の症例に認められた。血圧はsunitinib投与1コース目より上昇し、次第に増悪する。それに付随して、最近、sunitinibによる左心室機能障害などの心毒性が指摘されている。sunitinib特異的な有害事象であるGrade 1-4のhand-foot syndromeも20%の症例に認められた。Grade 3-4に限ると5%の症例に認められた。hand-foot syndromeの特徴的な症状としては、紅斑、腫脹、水疱、ハローを伴った疱疹などが出現し有痛性である。この皮膚症状が原因の疼痛のため、治療が継続できないことも多い。さらに、白血球減少、貧血、血小板減少などのGrade 1-4の骨髄抑制も約7割と高頻度に認められた。Grade 3-4に限ると、4-8%の症例に骨髄抑制がみられた。sunitinib特異的な血液生化学の異常としてアミラーゼ、リパーゼの上昇がある。Grade 1-4のアミラーゼ、リパーゼの上昇は、それぞれ32%、52%の症例に、Grade 3-4に限ると、5%、16%の症例に認められた。ただ、このアミラーゼ、リパーゼの上昇については治療の必要性はないと考えられている。以上に述べた有害事象によるsunitinib投与量の減量は32%の症例に、また、8%の症例で投与が中止された。

icon 本邦における臨床試験

 わが国でも2005年よりsunitinibのfirst line therapyとsecond line therapyの臨床試験が行われた。first line therapyとして施行した25例の奏効率は48%(CR :4%、PR:44%)であった。また、second line therapyとして施行した26例の奏効率も、46%(CR:0%、PR:46%)でと良好であった。しかし、有害事象に関しては、特に、Grade 3-4の疲労感が20%の症例に、Grade 3-4のhand-foot syndromeが14%の症例に認められ、前述のアメリカでの報告より約3倍高いものであった。さらに、Grade 3-4の好中球減少、血小板減少は約半数の症例に認められ、欧米での報告より5-7倍高いものであった。
 以上の結果から、転移を有する淡明細胞型腎細胞がんに対してはsunitinibがfirst line therapyの薬剤として有用である可能性が示唆された。ただ、白人に比べて日本人は有害事象が強く出るようなので、有害事象には十分注意を払う必要があると考えられる。

icon sorafenibとsunitinibとの交代療法

 2007年のASCOの総会で、転移を有する腎細胞がんに対するsorafenibとsunitinibとの交代療法に関する興味深い報告がみられた。Sorafenibもsunitinibと同様、 VEGFRやPDGFRを中心とした種々のtyrosine kinaseを阻害するmultikinase inhibitorであり、この作用により血管新生阻害作用や腫瘍の増殖抑制作用を有する分子標的治療薬である。Sablinらは、前述のexpanded trialに登録された転移を有する腎細胞がん2,341例中90例を解析した。68例はsorafenibが無効になった時点でsunitinibに変更し、22例はsunitinibからsorafenibに変更している。Sorafenibからsunitinibに変更した症例の奏効率は15%で、sunitinibからsorafenibに変更した症例の奏効率は9%であり、まず、sorafenibを服用し、次にsunitinibへの変更の有用性を示した。Dhamらは同様に、sorafenibからsunitinibに変更した転移を有する腎細胞がん23例と、sunitinibからsorafenibに変更した14例の合計37例を解析した。その結果、sorafenibからsunitinibに変更した症例の増悪までの期間の中央値は42週で、sunitinibからsorafenibへの変更群のそれが30.5週であり、sorafenibからsunitinibへの変更の優越性を示している。以上のデータから、転移を有する腎細胞がんに対するsorafenib、sunitinibを用いた交代療法の有用性に関する大規模な検討が望まれるが、sorafenib、sunitinibを用いた交替療法はある程度有効である。その用いる順序としては、sorafenibの次にsunitinibを投与する方が有用であると考えられる。

 

提供 : 株式会社スズケン



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