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<スズケンDIアワー> 平成20年10月16日放送内容より スズケン

早発排卵防止薬 ガニレリクス酢酸塩


足立病院 副院長
矢野 樹理

icon 生殖補助医療の動向

 体外受精胚移植法を中心とする生殖補助医療(ART)は、1978年の英国での成功報告以来、新しい画期的な不妊治療法として世界中で急速に発展普及し、現在では難治性不妊治療の中心的な役割を果たしております。

治療法別成績

 本邦でもすでに米国を凌駕する年間12万件以上の実施例が報告されており、年間2万人近くが出生しています。その標準的卵巣刺激法として、これまではGnRHアゴニストを早発排卵防止薬として使用するのが一般的であり、ほぼ確立された手法となっています。しかしこのGnRHアゴニストには、ゴナドトロピン製剤使用量の増加、OHSS発症リスクの増大、ホットフラッシュなどの更年期症状が現れる可能性などの欠点もありました。その欠点を補うべく開発されたのがGnRHアンタゴニストです。

GnRH agonist

 GnRHは10個のアミノ酸で構成されている単鎖ペプチドホルモンであり、視床下部で産生され、下垂体前葉のゴナドトロピン分泌細胞に働いて、ゴナドトロピン分泌を促します。GnRHの1位から3位のアミノ酸はゴナドトロピン放出作用に重要な役割をもっていると考えられ、6位と10位のアミノ酸は受容体への結合および生体内での分解に重要な役割をもつものと考えられています。その6位と10位のアミノ酸を置換することにより、受容体との結合親和性を増加させ、分解酵素への抵抗性を増すことにより、生物活性を強めたものがGnRHアゴニストであり、酢酸ブセレリンやナファレリンなどの薬剤が開発され、早発排卵防止薬としてすでに生殖補助医療の臨床現場で活用されています。

GnRH antagonist

 一方6位と10位に加えて1,2,3位のアミノ酸を置換することによりGnRHの生物活性を無くしたものがGnRHアンタゴニストです。当初開発された第一世代、第二世代のGnRHアンタゴニストはヒスタミン遊離作用が強くその副作用のために臨床応用が困難でありましたが、その副作用を軽減した第三世代のGnRHアンタゴニストが開発されて初めて臨床応用が可能となりました。その第三世代の代表的な薬剤が日本で昨年に先行発売されているセトロレリクスと、今回承認されたガニレリクスです。ちなみにガニレリクスは1,2,3位および6位10位に加えて、8位のアミノ酸も置換されています。さらに最近では第四世代アンタゴニストと呼ばれる水溶性の薬剤や経口投与が可能な非ペプチド性アンタゴニストなども開発されてきています。

icon GnRHアゴニストとGnRHアンタゴニストの相違点

 ここでGnRHアゴニストとGnRHアンタゴニストの作用の違いについて考えてみましょう。

GnRHアゴニストとGnRHアンタゴニストの相違点

 GnRHアゴニストは、ゴナドトロピン分泌細胞のGnRH受容体のダウンレギュレーションを利用して脱感作を行い、最終的にゴナドトロピン分泌を抑制するのですが、投与初期にフレアアップ現象と呼ばれる一過性のゴナドトロピン分泌刺激作用が認められるのが特徴です。投与開始してからゴナドトロピン分泌抑制までの時間が長く、また投与を中止しても、すぐにはゴナドトロピン分泌が回復しません。一方GnRHアンタゴニストは、GnRHの受容体への結合を競合的に阻害し、フレアアップを起こすことなくただちにゴナドトロピン分泌を抑制します。その抑制作用は迅速かつ用量依存的であり、また投与を中止すると、ゴナドトロピン分泌は速やかに回復します。

 

提供 : 株式会社スズケン



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