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<スズケンDIアワー> 平成20年10月23日放送内容より スズケン

進行・再発大腸癌治療薬 セツキシマブ


国立がんセンター東病院 消化器内科
吉野 孝之

icon セツキシマブの抗腫瘍効果

 切除不能進行・再発大腸癌に対する薬物療法は、ここ15年でその治療成績が4倍になり、平均的に2年の生存期間が期待できるようになりました最も進歩した癌腫であります。劇的に進歩した大腸癌薬物療法は、まず欧米で先行しましたが、日本でも次々と新薬が承認され、今や欧米と差が無くなりつつあります。

セツキシマブとは

 そして2008年7月に本邦で承認された新たな分子標的治療薬、それが抗EGFR抗体薬であるセツキシマブ(商品名アービタックス)です。
 EGFR (Epidermal Growth Factor Receptor; 上皮成長因子受容体)とは、細胞増殖にかかわる上皮成長因子の受容体として、現在までに4種類見出されている。正常組織においては細胞の分化、発達、増殖、維持の調節に重要な役割を演じていますが、癌細胞においてもEGFRは重要な役割を持ち、発癌、および癌の増殖、浸潤、転移などに関与します。

前臨床試験において証明されたセツキシマブの抗腫瘍効果

 セツキシマブに代表される抗EGFR抗体の非臨床の結果として、イリノテカン抵抗性大腸癌細胞を移植したマウスを対象にした動物試験を行った結果、イリノテカン、セツキシマブともに単独では腫瘍増殖抑制効果が得られませんでしたが、両剤を併用すると増殖が抑制できるという結果が得られたことから始まります。
 この移植マウスを使った非臨床試験のコンセプトを臨床で確認したのがBOND試験です。

BOND試験での治療成績

 BOND試験は、免疫染色でEGFRが陽性の、イリノテカンに抵抗性になった患者を対象とした試験で、イリノテカン+セツキシマブ併用群とセツキシマブ単独群を比較しました。イリノテカン治療を受けて進行してしまった結腸・直腸癌で、免疫染色でEGFR陽性が確認された329症例を対象としました。併用群218例は、セツキシマブを初回400mg/㎡、次回以降250mg/㎡を投与し、イリノテカンは継続した。セツキシマブ単独群は、試験途中で増悪となったらセツキシマブとイリノテカンの併用に切り替えるというデザインとなっていました。
 BOND試験では、その奏効率は、セツキシマブ+イリノテカン併用群で22.9%に対し、セツキシマブ単独群で10.8%、腫瘍抑制効果の割合は、セツキシマブ+イリノテカン併用群で55.5%、セツキシマブ単独群で32.4%だった。無増悪生存期間は、セツキシマブ+イリノテカン併用群で4.1カ月、セツキシマブ単独群で1.5カ月と、セツキシマブとイリノテカンを併用すると無増悪生存期間が延長することが確認されました。
 このBOND試験の結果を受けて、米国食品医薬品局(FDA)は、2004年2月にセツキシマブを承認しました。その適応は、「塩酸イリノテカンに不応のEGFR陽性転移性結腸・直腸癌(レジメン:セツキシマブ/イリノテカン併用)」、「塩酸イリノテカンに耐用不能のEGFR陽性転移性結腸・直腸癌(レジメン:セツキシマブ単剤)」です。
 では、セツキシマブは、EGFRを発現している大腸癌症例であれば、どんな場合でも抗腫瘍効果が得られるのでしょうか?
 EGFRを発現している細胞数や染色強度別の奏効率の関係を示した研究結果を紹介します。EGFRを発現している細胞の割合が10%以下、10〜20%、20〜35%、35%以上の4群に分けて奏効率を比較した結果、いずれも奏効率は20〜24%で一定していました。EGFRの染色強度を“Faint”“Weak or moderate”“Strong”の3群に分けた場合ではそれぞれ20.8%、24.7%、22.7%と、こちらも差がありませんでした。この結果から発現量や発現強度と抗腫瘍効果には相関はないと考えられています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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