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<スズケンDIアワー> 平成20年10月30日放送内容より スズケン

抗酸菌症治療薬リファブチン


国立感染症研究所 ハンセン病研究センター長
森 亨

icon わが国の結核の現状について

 日本の結核罹患率は人口十万対20で、これは米国の4倍、米国の1960年代後半の状況に近い状態です。結核に関して日本はまだ中進国のレベルに留まっているといわなければなりません。減少速度も1980年代以降は緩やかで、1990年代の終わりには一時逆転上昇に転じて、厚生労働省が「結核緊急事態宣言」を出したことも記憶に生々しいところです。
 こうした中、質的にも厄介な問題が浮上して来つつあります。まず重症結核の増加で、1975年頃には新たに発生する肺結核の中で菌陽性は20%足らずだったものが、いまは81%となっています。重症で発生する例や、重症にならないと診断がつかない例が多くなっていることを示しています。
 これと並行して、結核と診断がつき治療を初めて1年以内に結核で死亡する患者の割合が、1987年の2%から最近は5%へと上昇しています。これに関連して、死亡しないまでも「治療失敗」や「治療中断」の例が決して少なくないことにも注意が必要です。これらは,社会経済的弱者や基礎疾患を持った結核患者が増加していることに密接に関係しております。

日本の薬剤体制頻度

 同様に薬剤耐性が増える兆しを見せていることに注意が要ります。2002年の全国調査によれば、初めて結核の治療を受ける患者の8%、以前に治療を受けたことのある患者では23%が何らかの主要な薬剤に耐性を持っており、とくに治療の柱となっているリファンピシンとイソニアジドの両剤に耐性−多剤耐性−の例も既治療患者では10%にも及びます。
 また日本では絶対数は少ないとはいえ、HIV感染が未だに徐々に増加していますが、それと結核の合併は当然問題になります。現在のところ新たに発生する結核のなかでHIV合併は0.1%〜0.2%程度ですが、今後は徐々に増加することに十分警戒する必要があります。
 結核がゆっくりとはいえ減りつつあるのと逆に、日本では非結核性抗酸菌症は着実に増えており、少なく見積もっても年間8,000例程度発生しており、治療を必要とする患者はその数倍に及ぶと考えられます。2004年まではこの病気は便宜的に結核症の一部として治療されてきましたが、その後抗結核薬は正式には使えなくなり、保険診療上の死角となっております。つまりリファンピシンやエタンブトール、マクロライド剤などが非公式的にしか用いられていませんでした。さらに増加中のHIV感染者における非結核性抗酸菌症合併例の増加に際して、その予防や治療のための同様の薬剤の使用ニーズは一層高まってきています。
 このような状況において今回リファブチンが正式に結核および非結核性抗酸菌症の治療薬として承認されました。これによって日本のこれらの病気の治療がどのように向上すると期待されるのかについて考えてみたいと思います。

icon リファブチンの開発

Rifabutin

 リファブチンはリファンピシンやリファペンチンとともにリファマイシン系統の薬剤で、リファンピシンに続いて開発されたもので、アンサマイシンと呼ばれたこともありますが1990年代の始めには欧米各国で承認され、使用されてきました。その抗結核菌作用機序は主としてリファマイシンの通性としてRNA合成阻害であり、ほかにDNA合成も阻害するとも言われます。
 この薬剤の結核菌に対する最小阻止濃度はリファンピシンよりも低いので、当初は更なる治療の短期化も期待されましたが、リファンピシント比べて血中最大濃度が上がりにくい、半減期が長い、などの血中薬物動態の違いなどから結局臨床的効果はリファンピシンとほぼ同程度と位置づけられています。
 また薬剤耐性に関してもかなりの部分はリファンピシンと交叉してしまいますが、リファンピシン耐性株の約30%ではリファブチン感受性があると報告されています。

いくつかの薬剤とリファブチン・リファンピシンとの併用可否

 さて、リファンピシンは肝臓のチトクロームP450経路の強い誘導活性をもっており、そのため多くの薬剤が早く代謝されてしまい有効血中濃度が下がってしまう、と言う問題があります。エイズ治療に用いるプロテアーゼ阻害剤や非核酸系逆転写酵素阻害剤などを使用する際にはリファンピシンが使えないとか、副腎皮質ホルモン剤などは投与量の増加が必要になります。リファブチンはリファンピシンに比してこの酵素誘導がかなり緩やかなため、こうしたdrug-drug交互作用の問題はかなり軽減されますが、これはかなり重要な利点になると思います。
 実際に臨床的にリファブチンの適用にどのような有効性を期待できるのか、3点に要約してみました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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