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<スズケンDIアワー> 平成21年4月16日放送内容より スズケン

DI実例集(163)ボリコナゾールのCYP3A4の阻害による相互作用


東京大学病院薬剤部 助教
大野 能之

icon CYPを介する薬物間相互作用の網羅的予測

 そこで、私たちは、このような問題点を克服するために、in vivoにおけるCYPを介する薬物間相互作用を網羅的に予測する方法を開発し、医療現場での情報提供に活用しています。
 この予測方法について簡単に説明させていただきます。

CYPを介する薬物間相互作用の網羅的予測

 この予測は、基本的には2つのパラメータで予測をおこなうものです。すなわち、基質薬の阻害の受けやすさである代謝寄与率(CR)と阻害薬の阻害の強さである阻害率(IR)の2つのパラメータを定義すれば、相互作用による基質薬の血中濃度AUCの上昇は、1−CR×IRの逆数で表すことができます。このCRとIRといったパラメータは、該当するCYP分子種の典型的な阻害薬あるいは典型的な基質薬との相互作用試験の報告を用いて、この理論式から算出しています。そして、一度、CRとIRがわかれば、どのような組み合わせでも相互作用による基質薬の血中濃度AUCの上昇を予測できることになります。その予測精度は概ね2倍の範囲内と、精度の高い予測であることを報告しています。この予測の報告で検討したCYP3A4の基質薬14剤と阻害薬18剤のすべての組み合わせによる相互作用は約250通りになりますが、実際に相互作用試験の報告のある組み合わせは約1/3であり、残りの約2/3は相互作用試験の報告がない組み合わせになります。しかし、この予測方法は、報告がない2/3の組み合わせの相互作用の程度も予測して評価することが可能となります。この予測方法に基づけば、ボリコナゾールは、イトラコナゾールと同等以上の強力なCYP3A4の阻害薬と評価され、様々な種類のCYP3A4の基質薬との相互作用の程度を評価することが可能となります。

ボリコナゾールによる睡眠薬及びHMG-CoA還元酵素阻害薬の添付文書情報とAUC上昇率の報告値と予測値

 例えば、ボリコナゾールとトリアゾラムの相互作用では、この予測方法によれば、トリアゾラムの血中濃度AUCは約11倍にも上昇することが予測され、併用禁忌であることは妥当であると考えられます。また、トリアゾラムとゾルピデム以外の睡眠導入薬に関しては添付文書に記載がなく、相互作用試験も実施されていませんが、本予測方法によって、例えば、ブロチゾラムであれは5.9倍に上昇することが予測されます。これはイトラコナゾールとの併用では5.1倍に上昇することが報告されており、併用注意となっていることを考慮すると、添付文書に記載が無くても併用には注意が必要になると考えられます。
 同様の事例がHMG-CoA還元酵素阻害薬でも考えられます。いずれのHMG-CoA還元酵素阻害薬も併用注意に指定されていますが、相互作用試験の報告はありません。しかし、シンバスタチンでは20倍以上の血中濃度AUCが予測され、これはイトラコナゾールとの併用では19倍に血中濃度AUCが上昇し、併用禁忌に指定されていることを考慮すると、併用は基本的に避けるべきであると考えられます。一方で、ロスバスタチンでは相互作用による血中濃度AUCの上昇はないと予測されることから、比較的併用しやすいHMG-CoA還元酵素阻害薬であると考えられます。
 このように、添付文書に記載がない、あるいは臨床報告がないような組み合わせの相互作用に関しても、in vitroデータだけではなく、in vivoにおける相互作用の程度を評価して情報提供を行い、患者個別に適正な薬物療法を支援することは、これからの薬剤師の役割としても非常に重要なことであると考えます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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