<スズケンDIアワー> 平成21年4月23日放送内容より |
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北里研究所 美容医学センター長
佐藤 英明
ボツリヌス毒素はボツリヌス菌が産生する毒素です。
ボツリヌス毒素は、分子量約15万のタンパク質であり、細胞外に分泌された後に、菌自身のプロテアーゼまたは動物消化管のトリプシンによって、分子量約5万の活性サブユニット(Aサブユニット、軽鎖)と、分子量約10万の結合サブユニット(Bサブユニット、重鎖)に切断されます。この両者がジスルフィド結合によって一分子ずつ結合した、AB型毒素に分類される細菌外毒素です 体内に取り込まれた毒素が神経筋接合部に到達すると、神経細胞側の細胞膜(シナプス前膜)に存在する毒素受容体タンパク質と、毒素の結合サブユニットが結合します。結合した毒素はエンドサイトーシスによって、小胞内部に取り込まれ、神経細胞内でこの小胞の内部が酸性化すると、サブユニットが切断されて、細胞内に活性サブユニットが遊離します。神経細胞の内部には、アセチルコリンなどの神経伝達物質を内包する、脂質二重膜で覆われたシナプス小胞が存在します。神経細胞が興奮すると、このシナプス小胞がシナプス側の細胞膜の方に移動し、細胞膜と膜融合を起こすことで、小胞内部の神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます。この膜融合には3つのタンパク質が関与しており、この3つが会合することによって膜融合と、神経伝達物質の放出が行われています。細胞質に遊離したボツリヌス毒素の活性サブユニットは、この3つのSNAREタンパク質を標的として特異的に切断し、破壊してしまいます。SNAREタンパク質のいずれかが破壊されると、シナプス小胞と細胞膜の膜融合が起こらなくなり、神経伝達物質の放出が阻害される結果、神経伝達が遮断されます。これがボツリヌス毒素の作用メカニズムです。ボツリヌス毒素が標的とするタンパク質は、毒素の種類によって異なっています。今回お話しするA型毒素はSNAP-25を切断します。
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