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<スズケンDIアワー> 平成21年4月23日放送内容より スズケン

しわ治療薬 A型ボツリヌス毒素


北里研究所 美容医学センター長
佐藤 英明

icon はじめに

 ボツリヌス毒素はボツリヌス菌が産生する毒素です。
 ボツリヌス菌食中毒の原因となり、極めて毒性が強いです。しかし、加熱またはアルカリで処理すると失活して毒性がなくなるため、十分加熱すれば安全です。ボツリヌス毒素は毒素の抗原性の違いによりA〜G型の7型に分類されます。毒素としては、破傷風菌が産生するテタノスパスミンをも上回る毒性を持つと言われています。
 ボツリヌス毒素は神経筋接合部などでアセチルコリンの放出を妨げる働きをしますが、作用は末梢性に限られ、筋弛緩・鎮痛作用などが確認されています。中毒症状としては、下痢・悪心・嘔吐などの消化器症状に続き、めまい・頭痛や視力低下・複視などを起こし、その後自律神経障害、四肢麻痺に至ります。
 平成19年6月1日施行の感染症法に基づき、検査、治療、医薬品その他厚生労働省令で定める製品の製造又は試験研究目的にボツリヌス菌・毒素を所持する者は、「感染症発生予防規程の届出」「病原体等取扱主任者の選定」「教育訓練」等が義務づけられています。なお、医療目的で通常用量の所持の場合は、同法の対象にはなりません。

icon A型ボツリヌス毒素の作用機序

A型ボツリヌス毒素の作用機序

 ボツリヌス毒素は、分子量約15万のタンパク質であり、細胞外に分泌された後に、菌自身のプロテアーゼまたは動物消化管のトリプシンによって、分子量約5万の活性サブユニット(Aサブユニット、軽鎖)と、分子量約10万の結合サブユニット(Bサブユニット、重鎖)に切断されます。この両者がジスルフィド結合によって一分子ずつ結合した、AB型毒素に分類される細菌外毒素です

作用機序

 体内に取り込まれた毒素が神経筋接合部に到達すると、神経細胞側の細胞膜(シナプス前膜)に存在する毒素受容体タンパク質と、毒素の結合サブユニットが結合します。結合した毒素はエンドサイトーシスによって、小胞内部に取り込まれ、神経細胞内でこの小胞の内部が酸性化すると、サブユニットが切断されて、細胞内に活性サブユニットが遊離します。神経細胞の内部には、アセチルコリンなどの神経伝達物質を内包する、脂質二重膜で覆われたシナプス小胞が存在します。神経細胞が興奮すると、このシナプス小胞がシナプス側の細胞膜の方に移動し、細胞膜と膜融合を起こすことで、小胞内部の神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます。この膜融合には3つのタンパク質が関与しており、この3つが会合することによって膜融合と、神経伝達物質の放出が行われています。細胞質に遊離したボツリヌス毒素の活性サブユニットは、この3つのSNAREタンパク質を標的として特異的に切断し、破壊してしまいます。SNAREタンパク質のいずれかが破壊されると、シナプス小胞と細胞膜の膜融合が起こらなくなり、神経伝達物質の放出が阻害される結果、神経伝達が遮断されます。これがボツリヌス毒素の作用メカニズムです。ボツリヌス毒素が標的とするタンパク質は、毒素の種類によって異なっています。今回お話しするA型毒素はSNAP-25を切断します。

 

提供 : 株式会社スズケン



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