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<スズケンDIアワー> 平成21年4月23日放送内容より スズケン

しわ治療薬 A型ボツリヌス毒素


北里研究所 美容医学センター長
佐藤 英明

icon 開発の歴史

 ボツリヌス毒素の研究は第二次世界大戦当時に進展しました。生物兵器としての研究であり、精製法についてはこの時期に確立されています。「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」(生物兵器禁止条約)が発効した1975年以降は開発・生産・貯蔵・輸出入が国際的に制限されていますが、湾岸戦争時代にイラクが兵器として保有していたのをはじめ、テロリストに保有されやすい側面を持っています。ボツリヌス毒素の有する神経毒性を利用し、そのごく少量を注射して筋緊張亢進を局所的に緩和しようという試みは1960年代の後半から行われてきました。医療用医薬品としては 1981年にAlan B. Scott により、斜視に対し極めて微量のA型毒素が使用されたのを初め、臨床応用の検討が進み、2009年現在、75ヵ国で様々な疾患に用いられています。
 1989年に米国で承認取得したのち、日本国内においてはA型ボツリヌス毒素製剤(商品名:ボトックス、Botox)が注射剤として、1996年に眼瞼痙攣、2000年に片側顔面痙攣、2001年に痙性斜頸、2009年には2歳以上の小児脳性麻痺による下肢痙縮に伴う尖足の適応で承認されています。

icon 美容医療としてのボツリヌス毒素

 近年では医療用としてだけでなく、美容領域において筋弛緩作用を応用した「皺取り」や「輪郭補正」や「多汗症治療」の目的で使用されていることが多く、医師が個人輸入で入手して用いていました。アメリカ美容外科学会(ASAPS)の報告によると、1997年から2007年の10年間におけるアメリカでの美容形成施術件数では、非手術系の施術件数が8倍伸び、多くのアメリカ人が非手術系の施術を行ったことが確認できます。特にボトックスだけ見ると65,157件(97年)が2,775,176件(07年)と42倍の施術件数となっています。2009年1月、「65歳未満の成人における眉間の表情じわ」を効能・効果として、A型ボツリヌス毒素製剤が国内でも承認されました。ボツリヌス菌Clostridium botulinumにより産生されるA型ボツリヌス毒素を有効成分とする筋弛緩剤です。作用機序としては「眉間の表情じわ」を形成する表情筋である皺眉筋および鼻根筋に注射することによって、筋肉の収縮を抑制し、一定期間「眉間の表情じわ」を改善するものです。2009年3月現在、米国、イギリス、ドイツ、フランスをはじめ世界50カ国以上で承認され、広く美容医療・アンチエイジングに使用されている薬剤です。
 今回の承認により、日本国内においてアンチエイジング治療を行う輝かしい第一歩を踏み出したと言えるのではないでしょうか。今後、額のしわ、目尻のしわなど他の顔面表情筋に伴うしわの改善や多汗症、歯ぎしりや肩こりなどにも適応拡大されることを願います。しかし最近では、安いA型ボツリヌス毒素製剤が出回っていて、それが問題となっています。不純物が多く含まれていることが多く、効果も疑問視されているようです。また、副作用が多くみられるという報告もあります。

icon A型ボツリヌス毒素投与の承認条件と施注資格

 ボツリヌス毒素製剤であることから、以下の承認条件が定められています。
1) 本剤についての講習を受け、本剤の安全性及び有効性を十分に理解し、本剤の施注手技に関する十分な知識・経験のある医師によってのみ用いられるよう、必要な措置を講じること
2) 本剤使用後の安全・確実な失活・廃棄、その記録の適切な保管など、本剤の薬剤管理が適正に行われるよう、所要の措置を講じること
 また、施行するに当たっての資格も安全性情報提供の徹底の観点から、資格の更新意思の確認と最新の安全性情報/適正使用情報への理解に基づいた更新作業が必要となっています。年に1回の製造承認会社による資格更新が確認できない場合は、資格の失効となります。刑事訴追を受けるなどの公序良俗に反する行為を行った場合は資格無効となります。

 

提供 : 株式会社スズケン



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