<スズケンDIアワー> 平成21年4月30日放送内容より |
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和歌山県立医科大学腎臓内科・血液浄化センター 教授
重松 隆
最初にリン吸着剤の歴史をお話したいと思います。リン吸着剤は、1970年代では、水酸化アルミニウム製剤がリン吸着剤として使われました。これは、非常に効率の良いリン吸着力を持っており高リン血症治療薬として非常に優秀なものがありました。さらに、副作用としての胃腸障害がなく、また水酸化アルミニウムの薬は、胃の薬として販売されているぐらいです。しかも、リンを下げる力も強いということで非常に良く使われていました。現在でも、この薬を評価する先生方も多くいらっしゃいます。しかしながら、アルミニウムを飲みますと、少しずつですが、腸から吸収をされます。その結果、透析患者は、尿が出づらいものですから、体内に少量ずつ徐々にアルミニウムが蓄積し、脳に貯まるとアルミニウム脳症などの脳障害を発症したり、アルミニウム骨症を発症し骨軟化症などで苦しむ方が多く出ました。ですから、現在では、この水酸化アルミニウムは、リン吸着剤としては優秀なことは皆が認めておりますけども、透析患者には、副作用の点から用いられなくなりました。 その後、1990年代に入り、炭酸カルシウムに代表されるカルシウム剤がリン吸着剤として使用されました。この薬は、カルシウムを飲むと、食事中のリンと結合して、リン酸カルシウムという不溶性の物質として、便の中に排泄されることによりリン吸収を抑えるという薬です。この薬は、現在でも使われており、非常に優秀な薬であります。また、薬価が安いというメリットもあります。しかし、カルシウムは、体には必要なものではありますが、摂取過剰になると、高カルシウム血症を起こします。加えて、透析患者は、尿が出ないので尿中カルシウム排泄をすることがありません。そうしますと、余ったカルシウムは体内で吸収され、いわゆる軟部組織の石灰化や、一番怖い血管の石灰化などをきたすようになりました。
今回、新しく炭酸ランタンの水和物が開発されました。この薬剤の成分であるランタンは、水に溶けにくいものです。食事を通してタンパク質などがリンと結合しますと、炭酸ランタンとリンがくっついた不要物として便中に排泄されリンの吸収を抑える薬です。 この薬は、アルミニウムと同程度にリン吸着力が強いということがわかっています。また、カルシウムは、胃酸分泌が少ない、すなわち胃液が少ない方、PHが中性のようなときには効果が十分でないという欠点がありますが、この炭酸ランタンは、胃の状況に関わらず、リンとの結合力が非常に強く、安定したリン吸着力を持っています。従って、食事中のリンと確実に結びついてリンの吸着を阻害することができます。炭酸ランタン水和物は、2008年の10月に製造承認が出ました。そして同年12月にも薬価収載され、2009年3月に発売となりました。この炭酸ランタン水和物は、食事中のリンと結合する必要があるので、破砕粒化することが重要です。剤形としては、いわゆるチュアブル錠250ミリ、500ミリ錠の2種が発売されています。チュアブル錠ですから、口中でガリガリと噛んで、粉とまではいきませんが、かけらにしてゴクンと飲んでしまうことになります。
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提供 : 株式会社スズケン | ||||
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