→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成21年5月7日放送内容より スズケン

多発性骨髄腫治療薬 サリドマイド


虎の門病院血液内科 部長
谷口 修一

icon サリドマイドの歴史

 サリドマイドは1950年代後半に当時の西ドイツで睡眠薬として開発されました。日本でも1960年代に販売が開始され、不眠症、手術前の鎮静、胃腸薬や妊婦のつわり治療まで幅広く使用されました。

サリドマイド胎芽病

 しかし、サリドマイドを妊娠中に服用した場合、四肢奇形などの重度の先天異常や胎児の死亡を引き起こすことが明らかとなり、ヨーロッパでは直ちに薬剤の販売停止と回収が実施された。ところが、わが国においてはその販売停止と回収が遅れ、およそ1,000名ものサリドマイド被害者(うち認定被害者309名)を生む結果となり、社会的にも大規模な薬害事件に発展しています。
 このように、サリドマイドは医薬品としての製造承認が消失したにもかかわらず、その後も薬の効果の研究は続けられ、TNF-αの産生抑制や血管新生抑制などの作用を有することが明らかにされました。この結果に基づき、1998年に米国FDAはハンセン病に伴う結節性紅斑を適応症として厳重な管理システム(System for Thalidomide Education and Prescribing Safety :S.T.E.P.S(http://www.celgene.com/steps/index.htm))の下にサリドマイドの使用を承認しました。ほかにも多く悪性腫瘍を対象とした臨床試験が行われ、特に多発性骨髄腫に対してはその有効性が1999年頃明らかにされ、従来の治療不応例に対しても単剤で約30%前後、ステロイド剤との併用で約50%前後、その他の薬剤の併用時には、50%を超える奏効率が報告されています。現在では、サリドマイドは予後不良な多発性骨髄腫の治療薬として重要な位置づけにあり、これらを踏まえ、2003年にオーストラリアとニュージーランドで治療抵抗性の多発性骨髄腫の適応が承認され、米国でも、2006年にデキサメタゾンとの併用で多発性骨髄腫の適応が追加されました。日本では承認が遅れ、患者の強い希望もあり、医師の個人責任の下、薬監証明による個人輸入が行われ、その使用量は急増していました。ただ、各医療機関におけるサリドマイドの使用と管理については必ずしも適正に行われているとは言えず、新たな薬害が発生する危険性を危惧される状況にありました。こういった経緯の後、ついに2008年10月16日に標準的な治療の効果が不十分、または再発した場合の多発性骨髄腫治療薬として承認されたという状況です。

 

提供 : 株式会社スズケン



1 2 3 次項へ