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<スズケンDIアワー> 平成21年5月7日放送内容より スズケン

多発性骨髄腫治療薬 サリドマイド


虎の門病院血液内科 部長
谷口 修一

icon サリドマイドの作用機序

 サリドマイドの多発性骨髄腫に対する有効性の機序についてはさまざまな報告があります。

サリドマイドの作用機序

 現在ではサリドマイドの持つさまざまな機序が総合的に作用していると考えられています。

(1) 骨髄腫細胞および骨髄間質細胞に直接作用して、増殖抑制、細胞死をもたらす
(2) 骨髄腫細胞の間質細胞への接着を阻害し、結果として骨髄腫細胞の増殖抑制をもたらす
(3) 骨髄腫細胞の増殖に必要な骨髄間質細胞および骨髄腫細胞からのサイトカインの分泌抑制
(4) 骨髄間質細胞および骨髄腫細胞からのvascular endothelial growth factor (VEGF)やbasic fibroblast growth factor (bFGF)分泌を抑制し、骨髄の血管新生を抑制する機序
(5) 免疫調整作用

などです。

icon サリドマイド治療の効果

 1999年に、Singhal らは、難治性骨髄腫に対するサリドマイド単独療法の良好な成績を報告し、我々に大きな衝撃を与えました。

骨髄腫におけるthalidomideの作用機序

 治療不応の骨髄腫84例を対象として、部分寛解を24%、ミニマルレスポンス以上が32%に得られ、治療開始後1年で生存率58%、無イベント生存は22%というものでした。国内の成績では、日本骨髄腫研究会の調査で、2000年8月から2003年7月の間に73例がサリドマイド治療を受けており、サリドマイド単独群の奏功率は、部分寛解以上が29%、ミニマルレスポンス(MR)以上が50%であり、無増悪生存期間中央値は10.3月、全生存期間は24.1月と良好な成績でした。
 これらの成績から、現在では治療不応症例においてサリドマイド単独療法で約30%の奏功率が得られ、生存期間延長効果を認め、推奨すべき治療法と考えられています。投与量に関しては、日本人における成績では、副作用のため400mg/日以上の増量が困難な症例が多く、維持量は100−200mg/日が適切と考えられます。ただし、これらの有効性および長期成績の評価は比較試験で明らかにされたものではなくエビデンスレベルの高いものとは決していえないことを認識しておくべきと考えます。
 通常の治療に不応の多発性骨髄腫に対してサリドマイドが有効であることが知られると、化学療法の併用療法が検討されるようになりました。治療抵抗性多発性骨髄腫に対して他剤と併用することにより、40%−100%の部分寛解以上の効果が報告され、併用療法のより高い有効性が指摘されています。併用薬の種類の優劣については現時点では明らかにされていませんが、デキサメタゾンの併用によって、有意に高い完全寛解率が得られる事が自家移植後の再発を対象とした第V相臨床試験で明らかにされています。日本では日本骨髄腫研究会が、少量サリドマイド+少量デキサメサゾン併用療法の評価を、治療抵抗性骨髄腫患者66人を対象に行いました。M蛋白が25%以上減少した奏効例は63.6%、サリドマイド治療開始後の生存期間中央値は25.4ヶ月で、欧米の成績とほぼ同じでした。しかし、これらの臨床試験は、いずれも比較試験は行われておらず、その正確な評価はできていません。
 未治療例におけるサリドマイドの使用に関しては、単剤、デキサメタゾンとの併用、化学療法との併用が試みられ、期待できる成績が得られつつありますが、深在性静脈血栓症の予防など解決すべき問題もあり、海外で進行中の前向き無作為化比較試験の結果を待ちたいところです。維持療法としての有用性は現時点で明らかにされていません。

 

提供 : 株式会社スズケン



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