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<スズケンDIアワー> 平成21年5月14日放送内容より スズケン

添付文書の中の副作用(19)消化性潰瘍


帝京大学 名誉教授
清水 直容

icon 消化性潰瘍の病態

粘膜の防御因子と攻撃因子

 胃の粘膜は、五つの層からなっております。一番中側が粘膜層です。その部分だけがはがれた場合には、潰瘍ではなく「びらん」称します。それから下の粘膜筋板、筋肉の板ですが、さらに粘膜の下の層、その下に固有の筋層、そして腹腔に向かったところが奨膜です。その粘膜層以外で奨膜に達するまでのものが潰瘍と定義をされており、漿膜が破れますと当然ながら腹腔炎を起こすわけです。

消化性潰瘍の病態:防御↓と攻撃↑

 粘膜は、これを防御する因子と、それを攻撃する因子というものを考えて、そのバランスにより潰瘍というものの病態が理解できるわけです。その攻撃因子と前述のNSAIDも当然ですが、腸管内の細菌感染、特にヘリコバクターピロリについて、これが陽性の場合はNSAIDを使用すると消化性潰瘍の頻度が非常に高くなることが最近解ってまいりました。また、たばこを吸う方では喫煙がその攻撃因子となり潰瘍ができやすい。それから、防御する方の因子、例えば重炭酸塩が下がってしまうなど、これが下がると潰瘍ができやすいわけです。
 そして、今回の主な話ですが、プロスタグランジンという物質が、この防御の方に大事なものでして、これをNSAIDが減らしてしまうために潰瘍ができやすくなる。プロスタグランジンという物質は、もうこの名前からおわかりだと思いますが、前立腺(プロステイトグランド:prostate gland)から由来した名前で、それがいろいろな作用があるということが発見され、プロスタグランジンという名前になっているわけです。

icon NSAIDの粘膜障害機序

NSAID粘膜障害機序

 プロスタグランジンは、どのように生成されるかですが、サイクロオクシゲナーゼ(COX)、それにはCOX1とCOX2がありますが、胃の中に存在しているのはCOX1の方です。
 これがアラキドン酸からプロスタグランジンを生成していくわけですので、このCOX1を阻害するとプロスタグランジンができなくなる、あるいは少なくなってきます。それがNSAIDによる消化性潰瘍の原因の主なものです。

NSAID服用時危険因子

 この頻度は胃潰瘍の方が十二指腸潰瘍よりは多いわけですが、ヘリコバクター陽性の場合ですと約18倍に、NSAIDと併存の場合には約61倍に消化性潰瘍ができるという成績があります。従来、NSAIDは関節リウマチ治療に消炎鎮痛薬として多く使用されてきましたが、現在は生物学的製剤使用されるようになり、NSAIDは慢性関節リウマチ治療においても3カ月以上は使用しないことになっております。そういう意味でも消化性潰瘍は減少していくとは思います。

 

提供 : 株式会社スズケン



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