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<スズケンDIアワー> 平成21年6月18日放送内容より スズケン

血液透析患者におけるそう痒症改善剤 ナルフラフィン塩酸塩


東京女子医科大学東医療センター内科 教授
佐中 孜

icon かゆみと内因性オピオイドの相関

 オピオイド受容体は、μ(ミュー)、κ(カッパ)、δ(デルタ)の3種類に分類されています。この受容体に作用する内因性オピオイドは、μ受容体に作用するβエンドルフィン、κ受容体に作用するダイノルフィン、δ受容体に作用するエンケファリンです。
 μ受容体の作動薬として、モルヒネやフェンタニルなどが鎮痛薬として臨床応用されていますが、副作用として、依存性や便秘、そして「かゆみ」が発現することが認められています。
 一方、κ受容体はμ受容体と相反する作用を示すことが多く、その作動薬として臨床応用されるナルフラフィン塩酸塩は、κ受容体に選択的に作用して「かゆみ」を抑制します。
 血液透析患者の既存治療抵抗性のかゆみと、その原因と考えられている内因性オピオイドとの相関を調べるため、健常者と血液透析患者の血中オピオイドペプチド濃度を測定した臨床試験をお話しいたします。
 かゆみの強い透析患者ほどμ受容体アゴニストであるβエンドルフィン濃度が高いことが確認されました。また、βエンドルフィンとκ受容体アゴニストであるダイノルフィンの比(μ受容体アゴニスト/κ受容体アゴニスト比)を算出したところ、かゆみの強い透析患者ほど、この比が大きいことが明らかになっております。
 このことから、μ受容体アゴニスト/κ受容体アゴニスト比とかゆみの強さには相関があり、「μ受容体が優位になるとかゆみが発現し、κ受容体が優位になるとかゆみが抑制される」ということが示唆されております。
 この仮説に従えば、μ受容体をブロックする、もしくはκ受容体を作動させる、すなわち活性化することができれば、内因性オピオイド系のバランス異常を是正し、かゆみを抑制できると考えられます。
 そこで、κ受容体作動薬の開発が進められ、κ受容体作動性を有する化合物の創製に成功しました。以前から内因性オピオイドの関与が示唆されていた透析患者の既存治療抵抗性のかゆみを対象として止痒剤としての開発が開始されています。
 臨床試験では、選択的κ受容体作動性経口そう痒症改善剤ナルフラフィン塩酸塩の有効性を確認するため、抗ヒスタミン薬などの既存治療で効果不十分な、かゆみを有する血液透析患者を対象とした無作為化二重盲検比較試験が実施されています。

icon VAS値によるかゆみの評価

プラセボとの二重盲検比較試験〜VAS変化量の推移

 112例にナルフラフィン塩酸塩2.5μgを111例にプラセボを、原則夕食後に1日1回14日間経口投与し、かゆみの評価は、VAS(Visual Analogue Scale)の変化量によって行われました。

かゆみの評価法

 VASは、かゆみなどの主観的な症状を定量化するために国際的に汎用されている尺度であり、また、連続量であることから、個人内のかゆみの変化を感度よく表現できるとされています。
 長さ100mmの目盛りのない直線に、その左端(0mm)をかゆみなし、右端(100mm)を「考える最大のかゆみ」として、患者自身が感じているかゆみの程度に応じて印をつけ、0mmからの距離を測定し、VAS値として扱い、定量化するものです。
 その結果、ナルフラフィン塩酸塩2.5μg群は、プラセボ群と比較してVAS変化量の有意な改善を示し、血液透析患者における抗ヒスタミン薬などの既存治療で効果不十分なかゆみを改善することが証明されました。また、興味深いことに、ナルフラフィン塩酸塩投与終了後には、VAS値の上昇が見られております。

 

提供 : 株式会社スズケン



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