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<スズケンDIアワー> 平成21年6月25日放送内容より スズケン

1日1回投与型徐放性マクロライド系抗生物質アジスロマイシン水和物


東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門 教授
渡辺 彰

icon 服薬コンプライアンスと耐性菌保菌リスクの相関

治療成功率

 さて、この服薬コンプライアンスの低下は当然のことながら治療効果を低下させます。これに関しては枚挙に暇(いとま)がないほど多くの成績が報告されており、既に明確な事実ですが、さらにもう一つ、服薬コンプライアンスの低下が、耐性菌の保菌リスクを増大させることも明らかになっています。Guillemotは、フランス中部において3歳から6歳の小児肺炎を対象とした種々の薬剤、種々の投与法による肺炎治療を観察・解析し、治療中および治療後にペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)を有意に多く保菌するようになる危険因子は、ペニシリン系やセフェム系等の経口β-ラクタム薬の使用であると共に、その経口β-ラクタム薬で推奨されている用量以下、つまり低用量での投与であり、さらに、同じく5日間を超える長期間投与であったと報告しています。すなわち、低用量、かつ長期間の抗菌薬投与は服薬コンプライアンスを低下させるだけでなく、耐性菌を増加させているのです。

アモキシシリンによる治療の服薬コンンプライアンス

 一方、先にも引用したSchragは、小児の肺炎に対するアモキシシリンによる治療を、高用量・短期間、すなわち90mg/kgで5日間投与する群と、低用量・長期間、すなわち40mg/kgで10日間投与する群との2つに分けたところ、高用量・短期間投与群では低用量・長期間投与群と比べて服薬コンプライアンスが有意に高く、一方でペニシリン耐性肺炎球菌の保菌リスクが有意に低くなった、と報告しています。ちなみに、この低用量群における投与量の40mg/kgは、体重50kgの大人でいえば1日2000mg、すなわち250mgのアモキシシリンを1日8カプセル投与することになり、多くの場合日本ではこれが保険上の最大投与量ですが、欧米ではこの2倍、あるいはそれ以上を投与しているわけです。
 以上お話したことから、低用量で長期間投与するという治療法では血中濃度が上がらず、加えて服薬コンプライアンスの低下を招くことから、治療有効率が低下すると共に完全な菌消失は得られず、耐性菌を増加させることにもなる、と結論できます。しかし、なぜこのような治療法が行われてきたのでしょうか?
 日本がとりわけそうだったのですが、抗菌薬の副作用を恐れるあまり、さらには小手先で様子見のために少量投与を行う、ということの行われる傾向がありました。その結果出てきたのが耐性菌であり、特に1990年代に増加したペニシリン・セフェム耐性肺炎球菌(PRSP)であると考えられています。幼児期や小児期、高齢者において抗菌薬の奏効しにくい感染症が増加して問題になったことはよくご存じの事と思います。

 

提供 : 株式会社スズケン



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