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<スズケンDIアワー> 平成21年7月2日放送内容より スズケン

注意欠陥/多動性障害治療薬 アトモキセチン塩酸塩


国立国際医療センター国府台病院 第二病棟部長
齊藤 万比古

icon メチルフェニデートとアトモキセチンの特徴

 ではこれら二剤の特徴はどういった違いがあるのでしょう。
 まず、メチルフェニデートは代表的な中枢刺激薬で、ドーパミン神経系を介して実行機能障害と報酬系機能障害の両者を改善するとされています。

メチルフェニデートの特徴

 本薬は効果持続が12時間続くよう設計されたオロス錠という特殊な剤型で、1日一回投与で夕方遅くまで効果を発揮します。効果発現はすばやく、効果もはっきりとしています。
 しかし、強い不安・緊張、うつ病、チックを持つ場合は禁忌とされており、主な副作用には食欲不振、体重減少、不眠などが挙げられています。
 一方、新たに登場したアトモキセチン剤は選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬で、中枢刺激薬ではありません。

アトモキセチンの特徴

 前頭前野におけるノルアドレナリンとドーパミン濃度を上昇させることで、実行機能を活性化しますが、薬物乱用にかかわる側座核やチックに関与する線条体のドーパミン濃度を上昇させることはないとされており、メチルフェニデート剤の一つリタリンで問題となった薬物乱用は生じないとされています。
 アトモキセチンの効果持続時間はメチルフェニデートより長く、1日一回投与で効果を終日発揮しますが、十分な効果発現までに6〜8週間かかるという特徴があり、メチルフェニデートの切れ味のよさとの違いとなっています。また、主な副作用には投与初期の頭痛、消化器症状、傾眠などが挙げられています。

icon 今後のADHD薬物療法アルゴリズム

 以上のような異なる特性を持った2剤を適応薬として持つことになった現在、わが国のADHD診療に関わる医師は2剤の各々の特性をよく理解した適切な使い分けが必要になります。しかし、発売されたばかりのアトモキセチンには、使い分けの指標として挙げるほどの臨床経験の蓄積がまだありません。
 両剤の特性をこれから数年の間蓄積し、その結果得られた両者の臨床上の特性の違いに応じた薬物療法アルゴリズムを作成する必要があるのではないでしょうか。
 それまでは仮に、両剤の効果やその特性は同等とみなし、どちらかで治療開始した場合に、それが十分な効果を発揮しなければ、最初に選択しなかった薬剤に移行することを推奨したいと思います。そして、もし2剤が単剤で効果が得られなかった場合、第三選択薬のカルバマゼピンやバルプロ酸などの感情安定薬や、抗精神病薬などの少量投与を加える方法を用いるか、アトモキセチンとストラテラメチルの併用を試みるかがオプションとして選択されることになるでしょう。
 いずれにしてもメチルフェニデートとアトモキセチンという2剤の適用薬を持った、我が国のADHD薬物治療はこれから欧米とともに両剤の経験を積み重ねていく必要がある時代を迎えたと考えています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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