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<スズケンDIアワー> 平成21年7月9日放送内容より スズケン

超速効型インスリンアナログ製剤 インスリングルリジン


JR東京総合病院内分泌代謝科 担当部長
山下 滋雄

 2009年6月、第三の超速効型インスリンアナログであります、インスリングルリジンが発売になりましたので、本日はこの新しいインスリン製剤の特徴についてお話します。

icon 注射によるインスリンの補充

 正常人のインスリン分泌には、食事をしていない状態でもインスリンの血中濃度を一定以上に保つ基礎分泌と、食事などにより血中グルコース濃度が上昇するにしたがってインスリンが分泌される追加分泌とがあります。健常人におけるこの基礎分泌と追加分泌の比率は1対1であるとする報告があり、インスリン分泌がほとんど枯渇している1型糖尿病患者の治療において、注射するインスリンの基礎分泌に相当するものと追加分泌に相当するものを1対1に近づけることにより、血糖コントロールが安定化するとも言われています。つまり、基礎分泌に相当するインスリンを、十分に補うことが重要であるということです。

理想的なインスリン動態の再現

 注射によりインスリンを補充する方法としては、1型糖尿病やインスリン分泌が低下している2型糖尿病の患者に対して、基礎インスリンに相当する中間型や持効型インスリンを眠前などに注射し、追加分泌に相当する速効型もしくは超速効型インスリンを各食前に注射する、basal-bolus療法が、インスリンの生理的分泌をよく再現する方法として最も優れた方法であると考えられます。このことは、1型糖尿病においては、1993年に報告されたDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)と、その長期follow upの結果を2000年に報告したEDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications) により、証明されているといってよいでしょう。また2型糖尿病についても、1995年に報告された熊本スタディにより、同様の結果が示されています。

icon インスリン製剤開発の歴史

理想的なインスリン動態の再現

 それでは、この基礎インスリンと追加インスリンには、どのようなインスリン製剤を使用するのが適切なのでしょうか?現在使用可能なインスリン製剤には、追加分泌用に使用される速効型と超速効型、基礎分泌用に使用される中間型と持効型、更にこれらの混合製剤がラインナップされています。インスリン製剤は、初期にはウシやブタから抽出されたインスリンが使用されていましたが、バイオケミカルなテクノロジーの進歩により、1980年ころからヒトのインスリンと全く同じアミノ酸配列をもつレギュラータイプのインスリン製剤が大量に生産可能となり、これは速効型インスリンと呼ばれています。しかし、当時はペン型注射器もなく、針も太くて痛かったため、注射回数を減らすために、むしろ長時間作用するための工夫がなされてきました。その工夫の一つが亜鉛や、プロタミンというたんぱくを用いて懸濁製剤にするというものでした。そのなかで、懸濁製剤のNPH(Neutral Protamine Haegedorn)は、中間型インスリンと位置付けられていました。1993年のDCCT以来、basal-bolus療法の主流は、速効型インスリンを各食前に注射し、眠前に中間型を注射する4回法もしくはその亜型でした。しかし、速効型とはいっても、正常人なら食後約15分でインスリンがピークに達するところを、インスリン注射をしてからからピークに達するまでには約2時間かかっており、より早く効果を発揮するインスリン製剤が望まれていました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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