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<スズケンDIアワー> 平成21年7月16日放送内容より スズケン

統合失調症治療薬 筋注用リスペリドン


千葉大学大学院精神医学 教授
伊豫 雅臣

 本日は新しい統合失調症治療薬である筋注用リスペリドン(リスペリドン持効性注射薬)についてお話ししたいと思います。

icon 統合失調症における再発予防の意義

 統合失調症は生涯有病率約1%と大変多くの方々がかかる病気です。
 この病気の問題は比較的若い時期に発症し、長い期間治療を受ける必要があります。また再発率の高い病気で、初発から2年で約50%の人が再発し、5年で約80%の人が再発すると言われています。そしてこの再発により、入院やひきこもり、暴力・犯罪に巻き込まれる可能性が高く、患者さんの社会生活上、大きなデメリットを生じます。
 では再発予防において最も重要な因子は何でしょうか。いくつかの研究報告から、再発を予防するのに最も重要なことは、抗精神病薬の継続的な服薬であるということが知られています。言いかえれば、服薬を中断することにより再発する可能性が非常に高くなるのです。例えば、抗精神病薬を服薬している人と中断してしまった人の1か月間の再発率をみてみますと、服薬している人たちでは3.5%の再発率に対して、中断した人たちでは11%の人たちが再発すると報告されています。

icon 抗精神病薬のコンプライアンス

 次に、抗精神病薬を長期に服薬するという点について述べたいと思います。先に述べたように再発せずに良好な社会生活を送るには、抗精神病薬を長期間服用することが重要であるということが知られております。しかし、長期間服薬し続けることは、統合失調症患者さんに限らず、糖尿病や高血圧などの慢性疾患でも大変困難であると言われています。そして統合失調症患者さんの約60%では、処方された薬を適切に服用していないということが報告されています。
 では、何故長期間服用することが難しいのでしょうか。私たちは千葉県で外来通院中の統合失調症患者さんにアンケート調査を行い、860人の方々から回答を得ることができました。
 その結果、飲まなかった理由として、約40%の人が、うっかり飲み忘れてしまった、というものでした。続いて、副作用がある、服薬の必要がない、効き目がない、わずらわしい、という理由が得られました。この結果から、服薬を継続してもらうには、薬を飲む回数を減らし、しかも飲み忘れを少なくするように患者さんの生活習慣に配慮して飲む時間を設定したり、薬の量や種類をできるだけ減らし、さらに服薬の重要性をわかりやすく説明することが大事であると考えました。さらに一度注射すると2週間から4週間効果が持続する、持効性の抗精神病薬注射も有効であるとの結果に至りました。

icon 持効性注射薬の再発予防効果

 抗精神病薬の持効性注射薬の再発予防効果は本当にあるのでしょうか。この抗精神病薬の持効性注射薬は一度注射すると体内に比較的安定した濃度で抗精神病薬が存在するため、再発リスクも非常に小さくなります。実際に海外の研究報告でもそれを支持しています。また、当然のことながら、飲み忘れや服薬するわずらわしさがありません。
 なぜ、我が国ではそれほど持効性注射薬が今まで普及してこなかったのでしょうか。理由の一つとして治療者に不安があるため、患者さんにあまり勧めていないということがあげられると思います。治療者としては、注射による痛みや注射を受ける面倒臭さなどから患者さんは注射に抵抗があるのではないかと心配しているのです。そしてそのために患者・治療者関係が悪くなるのではないかとも考えてしまいます。また、一度注射すると体の中に薬が長くとどまるので、副作用が発現した場合には薬が体から消失してくるまで長く待たなければならないということもあります。従って、薬の有効性に加え、注射による痛みが少なく、注射部位に硬結や発赤ができにくく、副作用も少ない持効性注射薬が望まれます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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