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<スズケンDIアワー> 平成21年7月23日放送内容より スズケン

乳がん治療薬ラパチニブトシル酸塩水和物


聖路加国際病院ブレストセンター センター長
中村 清吾

icon ラパチニブの臨床効果

 ラパチニブの臨床効果は海外で実施された第III相試験で示されています。

海外第III相臨床試験

 トラスツズマブ、アントラサイクリン、タキサン系薬剤既治療のHER2陽性進行性または転移乳癌患者を対象とし、ラパチニブ1250mg/日とカペシタビン体表面積あたり1000mg/㎡1日2回投与による併用療法群、およびカペシタビン1日体表面積あたり1250mg/㎡による単独療法群に分けられました。主要評価項目は無増悪期間で、無増悪期間中央値は併用群では8.4ヶ月、単独群では4.4ヶ月でした。併用群は単独群に対して有意に、無増悪期間を延長していました。また全奏効率は、単剤群で14%、併用群で22%でした。これは、トラスツズマブにより増悪した患者に対して、第III相試験による臨床効果を示した初めての試験です。

icon 副作用について

ラパチニブ・カペシタビン併用療法 主な副作用

 この海外第III相試験でのラパチニブとカペシタビンの併用療法での主要な副作用は、下痢、手足症候群、悪心、発疹、などでした。下痢は60%、発疹は25%の症例に発現しています。このうち、下痢、発疹は、ラパチニブを上乗せすることで発現頻度が増していました。また国内の単剤での第II相試験においても、下痢67%、発疹は46%に発現していました。いずれもグレードは1または2の副作用が主なものでした。

 この海外第III相試験の結果を元に、ラパチニブは国内外で承認されています。 なお、日本人の乳癌患者に対しても、この海外の第III相試験におけるラパチニブとカペシタビン併用と同じ用法・用量において忍容性が得られています。
 ラパチニブとカペシタビンの併用療法を行う患者さんには、事前にラパチニブによる頻度の高い副作用として、下痢や発疹があることをよく説明すること、およびその対処方法についての指導が大切です。
 下痢の多くは発現後、できるだけ早期に塩酸ロペラミドの投与を行うことで対処は可能です。また水分補給も大切なポイントです。ただし、グレード2以上の下痢の場合は来院にて、きちんと状態を確認のうえ対処することをお勧めします。
 下痢や発疹の他にも頻度は低いものの、特に注意を要する副作用として、肝機能障害、間質性肺疾患、心障害などがあります。いずれも、リスクの高い患者さんへの投与については、必要に応じて事前に専門医とも相談し、慎重に投与することが肝要です。さらに投与中も、定期的に検査を行い、患者さんの状態をモニターすることが大切です。
 これらの詳細については「適正使用ガイド」に記載されているので、ぜひご一読ください。また、この薬剤は、全例を対象とした、使用成績調査が課せられており、日本人を対象とした、安全性、効果の情報を引き続き集積することになっています。

 ラパチニブは、トラスツズマブに比べ、分子量が小さいため、脳関門を通過して効果を発揮する可能性があり、実際にHER2陽性の乳癌脳転移の患者に対する第II相国際共同試験では、一部の患者さんに対して、腫瘍縮小効果が認められています。
 この他、ラパチニブは、転移乳癌の初回治療や、術後補助療法さらには、術前療法など複数の臨床試験が現在進行中で、将来的には新たな展開が大いに期待できる薬です。これまでHER2陽性でトラスツズマブしか治療の手段がなかった乳癌の患者さんに対して、次の選択肢が出てきたということは、誠に喜ばしいことですが、効果のみならず安全性にも十分留意したうえでの使用を重ねてお願いして、本日の話の締めくくりとさせていただきます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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