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<スズケンDIアワー> 平成21年8月13日放送内容より スズケン

高血圧治療用配合剤テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド


獨協医科大学 名誉教授
松岡 博昭

icon ARBとサイアザイド系利尿薬の作用機序

 それでは配合剤としてはどのような組み合わせがいいのでしょうか。

JSH2009で推奨している2剤の併用

 JSH2009ではCa拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬の5剤を主要降圧薬と位置づけ、単剤で十分な降圧が得られない場合にはこれら5剤の中から2剤を組み合わせて併用することを勧めています。これらの併用の中でも特にCa拮抗薬とARBやACE阻害薬との組み合わせ、あるいはARBやACE阻害薬と利尿薬との組み合わせが好ましいと考えられます。ACE阻害薬に比較してARBは副作用が少なく、わが国では処方頻度が増加しており、エビデンスも欧米およびわが国において集積されてきております。

ARBとサイアザイド系利尿薬の作用機序

 ARBはアンジオテンシンIIの作用を受容体レベルで遮断して血管を拡張させることにより降圧作用を示しますので、レニン・アンジオテンシン系が亢進している病態で降圧効果が高まります。しかしながら、血管拡張による血圧の低下は腎臓のかん流圧を低下させ、腎臓でのナトリウムの再吸収が亢進して体液を貯留させる方向に働きます。また、ARBはアルドステロン産生を抑制しますのでカリウムを保持する方向に作用します。一方、利尿薬はナトリウムを体から排泄することにより降圧作用を示しますとともにレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を刺激してカリウムを排泄する方向に作用します。また、ARBは心臓や腎臓に対しては降圧とは独立した臓器保護作用を示すことも報告されています。同様に食塩が高血圧をきたすとともに血圧とは独立して脳、心臓、腎臓などの主要臓器の障害をもたらすことが報告されていますので、食塩を排泄する利尿薬は降圧作用とともに主要臓器の保護作用を示すことが期待されます。すなわち、ARBと利尿薬の配合剤はより効果的な心血管系の臓器保護作用を示す可能性があるといえます。また、ARBと利尿薬は異なる作用機序により降圧作用を示しますので降圧作用は増強され、副作用は軽減されるということになります。ご承知のように利尿薬にはサイアザイド系および類似利尿薬、ループ利尿薬、カリウム保持性利尿薬の3種類がありますが、降圧薬としては特殊な病態を除き、サイアザイド系および類似利尿薬が用いられ、エビデンスも豊富にあります。

本邦におけるARBと利尿薬の配合剤

 このような状況の下、わが国でもARBとサイアザイド系利尿薬であるヒドロクロロチアジドの配合剤が開発され使用可能となってきました。これまでわが国でヒドロクロロチアジドとの組み合わせで配合剤として用いられているARBはロサルタン、バルサルタン、カンデサルタンの3剤でありましたが、ごく最近、テルミサルタンとヒドロクロロチアジドの配合剤も登場することになりました。ご承知のとおり現在わが国で用いられているサイアザイド系および類似利尿薬の1錠中の用量は開発当初と変化なく、ヒドロクロロチアジドも25mgと極めて多い用量です。初期の大規模臨床試験におきましては利尿薬の大量投与が行われており、利尿薬が脳卒中は抑制しても冠動脈疾患は抑制しないといわれていました。冠動脈疾患を抑制しない理由としては大量投与による低カリウム血症や高尿酸血症などが関与していると考えられます。そのような反省の上に立ちまして、比較的最近の大規模臨床試験では少量の利尿薬が用いられており、少量の利尿薬が脳卒中のみならず、冠動脈疾患をも抑制することが示されています。利尿薬は用量を減じても降圧作用はそれほど失われず、副作用が著明に減少することが知られています。わが国で使用可能となってきましたARBと利尿薬の合剤は前述しましたように数種類ありますが、合剤として用いられているヒドロクロロチアジドの量は12.5mgあるいは6.25mgと従来の1錠中の用量の1/2あるいは1/4の量となっています。したがって、利尿薬による低カリウム血症や高尿酸血症などの副作用は極めて少ないということになります。

 

提供 : 株式会社スズケン



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