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<スズケンDIアワー> 平成21年10月15日放送内容より スズケン

前立腺肥大症治療薬 デュタステリド


札幌医科大学泌尿器科 教授
塚本 泰司

 本日は、新しいタイプの前立腺肥大症治療薬である5α還元酵素阻害薬のデュタステリドについてお話ししたいと思います。
 前立腺肥大症での排尿困難の原因である下部尿路通過障害は、2つの病態で形成されます。一つは前立腺平滑筋の過剰な収縮による機能的閉塞で、これにはアドレナリン作動神経と前立腺平滑筋内のα1アドレナリン受容体が関与しています。もう一つは機械的閉塞で肥大結節によりもたらされるものです。これには、前立腺組織内のジヒドロテストステロンが関与していますが、この点については後ほど再度説明いたします。

icon 前立腺肥大症治療に対する薬物治療

前立腺肥大症に対する薬物治療

 わが国ではこれまで、前立腺肥大症に対してはα1アドレナリン受容体遮断薬(以後、α1遮断薬)、ステロイド性抗アンドロゲン薬、植物製剤などが用いられてきました。α1遮断薬は機能的閉塞を解除し、ステロイド性抗アンドロゲン薬は前立腺を縮小させることで機械的閉塞を解除します。
 わが国で使用されているステロイド性抗アンドロゲン薬は、血中のテストステロンを低下させますので、勃起障害の頻度が高いという欠点がありました。そのため、臨床的には使用できる患者さんが限定されていました。
 一方、抗アンドロゲン作用を持ち前立腺を縮小する薬剤には、5α還元酵素阻害薬と呼ばれるものがあります。この薬剤は、テストステロンの作用を前立腺細胞内のみでブロックするので、血中のテストステロンを低下させないという大きな特徴があります。今回、わが国でも使用できるようになったデュタステリドは、この5α還元酵素阻害薬に属する薬剤です。同様な薬剤としてフィナステリドがありますが、わが国ではその使用が認められていません。

icon デュタステリドの作用機序

 初めにデュタステリドがどのようにしてテストステロンの作用をブロックし、前立腺を縮小させるのかを簡単に説明いたします。

アンドロゲン作用の発現とヂュタステリドの作用機序

 血中から前立腺の細胞に取り込まれたテストステロンは細胞質にある5α還元酵素によりジヒドロテストステロンに代謝されます。ジヒドロテストステロンは、その後細胞の核にあるアンドロゲン受容体と結合します。そして、これらの複合体はDNA上のアンドロゲン反応要素とさらに結合することでmRNAの合成を促します。その結果、前立腺の増殖や機能発現に関与するタンパクの産生が促され、テストステロンの作用が発揮される訳です。
 一方、5α還元酵素にはI型とII型という2つのアイソザイムがあります。前立腺の細胞には両者が存在しますが、デュタステリドはI型とII型の両方の活性を抑制します。デュタステリドによりこの酵素の活性が抑制されると、テストステロンからジヒドロテストステロンへの代謝がブロックされ、ジヒドロテストステロンの前立腺組織内の濃度が低下し、その結果前立腺が縮小します。このように、5α還元酵素の活性のみを抑制するものが5α還元酵素阻害薬といわれている薬剤です。

 

提供 : 株式会社スズケン



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