→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成21年10月15日放送内容より スズケン

前立腺肥大症治療薬 デュタステリド


札幌医科大学泌尿器科 教授
塚本 泰司

icon 前立腺肥大症治療の動向

 さて、前立腺肥大症の治療では肥大前立腺を縮小する治療が再び注目されています。その背景を説明いたします。
 これまでの前立腺肥大症の治療ではα1遮断薬が治療のfirst choiceとなっていましたが、その理由の一つは、肥大の程度にかかわらず、効果の発現は早く、少なくとも短期の効果は良好であるためでした。しかし、一方でその長期成績に問題があることもわかってきました。すなわち、α1遮断薬の長期成績を規定する要因の存在です。これらのうち、治療前の要因として前立腺の大きさ、下部尿路症状の程度、最大尿流率、などが指摘されています。特に、前立腺の大きさに関しては、一定以上の大きさ、例えば30-40mL以上の前立腺容積の場合には、α1遮断薬の効果がより早期に減弱することが知られていました。このような理由から、肥大前立腺を縮小させるような5α還元酵素阻害薬による治療に意味がある、ということが指摘されていました。

MTOPS試験

 このことを明確に証明した大規模臨床試験がMTOPS試験です。5年以上にわたる観察を行ったこの試験で明らかになったことは、第1に、5α還元酵素阻害薬により前立腺を縮小することが、臨床経過に伴い出現する各種のリスクをα1遮断薬と同様に明らかに軽減したことです。第2に、さらに重要なことは、これらのリスクは5α還元酵素阻害薬とα1遮断薬の2つの薬剤の併用で最も大きく軽減されたことです。

CombAT試験

 長期経過を検討すると併用療法に意味があるという結果は、5α還元酵素阻害薬としてデュタステリドを、α1遮断薬としてタムスロシンを用いたコンバット試験という別の臨床試験でも再現されています。
 以上のように、α1遮断薬と5α還元酵素阻害薬の併用も患者さんの臨床所見と長期経過を考慮すると、前立腺肥大症に対する薬物治療の一つとして重要であると考えられます。

icon デュタステリドの使用上の留意点

 最後に、このデュタステリドの日常臨床での使用に関して触れます。当然ではありますが前立腺肥大が明らかな患者さん、通常、30-40mL以上の大きさの場合が良い適応となります。直腸診では軽度肥大から中等度肥大以上の大きさとなります。経直腸的超音波断層法による大きさの測定が理想的ですが、経腹的超音波断層法でも測定はできますので、これを利用するのがよいでしょう。治療前にPSAの測定を行い前立腺癌の可能性が低いことを確認しておく必要があることは、既に述べた通りです。
 これまでの国内外での臨床研究から、デュタステリドとα1遮断薬との併用という使用方法が一般的と考えられます。デュタステリド単独による治療でも問題はありませんが、治療効果の発現に時間がかかることが欠点です。投与後3-6か月の経過が必要になります。
 デュタステリドとα1遮断薬との併用には2つの治療方法があります。はじめから両者を併用する方法と、α1遮断薬を先行させ治療効果不十分の場合にデュタステリドを併用する、という方法です。
 デュタステリドとα1遮断薬を治療開始時から併用する治療は、前立腺肥大が明らかな場合にはその有効性は明らかです。これはこれまでの国内外の臨床試験の長期成績で明確に証明されています。一方、国内での成績ではα1遮断薬で臨床効果が不十分となった場合に、デュタステリドを追加することで明らかな効果を得ることができることも示されています。これらの2つの治療法をどのように使い分けるかなどについては、今後の検討課題です。
 いずれにしても、5α還元酵素阻害薬としてデュタステリドを日常臨床で使用できるようになったことは、前立腺肥大症の治療の上で非常に有意義なことであるといえます。わが国でもようやく「役者が揃った」状況になったといえます。この薬剤の適正使用をぜひ先生方にも検討していただきたいと思います。

 

提供 : 株式会社スズケン



前項へ 1 2 3