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<スズケンDIアワー> 平成21年11月5日放送内容より スズケン

DI実例集(165)フッ化ピリミジン系抗がん剤とワルファリンの相互作用


名古屋大学附属病院薬剤部 薬品情報室
太田 小織

 本日は、フッ化ピリミジン系抗がん剤とワルファリンとの相互作用についてお話したいと思います。

icon フッ化ピリミジン系抗がん剤とワルファリン併用による副作用

 高齢化に伴い、過去30年近くがん疾患が日本人の死亡率の1位を占めています。2006年にはがん対策基本法も成立され、がん予防およびがん医療の充実が推進される中、抗がん剤による化学療法の重要性も増加しています。その中でも、代謝拮抗剤であるフッ化ピリミジン系抗がん剤は、フルオロウラシル(5-FU)や5-FUのプロドラッグ製剤であるテガフールとその配合剤、カルモフール、ドキシフルリジン、カペシタビンが市販されており、消化器がんや乳がんを中心に幅広く使用されています。しかし、以前よりフッ化ピリミジン系抗がん剤とワルファリンとの併用によるInternational Normalized Ratio (INR)上昇など血液凝固検査値異常や出血などの副作用が数多く報告されています。

カペシタビンの添付文書より

 中でもカペシタビンは1998年4月、米国にて発売後、転移性乳がん、大腸がんに対し広く使用されています。その後、ワルファリンとの併用により、血液凝固検査値異常、出血が発現し死亡に至った例も報告されたため、1999年3月、FDAはDear Doctor Letterを発布し、注意喚起を促しました。
 日本国内においては、2003年6月に発売され、添付文書にその内容が警告として記載されています。同様に、国内で1999年3月に発売されたテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤ティーエスワン(TS-1)Rでも、ワルファリンとの併用による有害事象がいくつか報告され、添付文書にも併用注意として記載されています。

icon 症例報告

 今回、我々も、TS-1とワルファリンの相互作用と思われる症例を経験しましたので、紹介いたします。

TS-1とワルファリンの投与量とINR推移

 患者は67歳の男性で、高血圧、心房細動の既往があり、腹部大動脈瘤にてグラフト置換、心筋アブレーションが施行され、ワルファリンを内服中でした。2007年12月10日、直腸がんに対し、低位前方切除術が施行されました。ワルファリンは11月初旬から中止していました。多発性肺転移を認め、翌年1月11日よりmFOLFOX6療法を開始し、6コース施行しました。1月12日よりワルファリンも2mgで再開し、3月5日には、INR 1.72で1.5mgに減量しましたが、4月16日にはINR 1.48と安定していました。しかし、CTにより肺病変の悪化を認めたため、治療変更が提案されましたが、本人の希望により、4月22日よりTS-1単独療法(4週投薬、2週休薬)を開始しました。1コース開始から38日目の5月28日にINRが4.80と上昇したため、ワルファリンを0.5mgに減量しました。2コース終了後の7月9日にはINR 1.35でした。肺病変のさらなる悪化を認めたためTS-1療法は3コースで終了、8月15日よりFOLFIRI、ベバシズマブ療法に変更となりました。その後INRは1.1前後を推移していました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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