<スズケンDIアワー> 平成21年11月26日放送内容より |
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東京大学大学院臨床疫学・経済学 准教授
福田 敬
患者がキチンと薬を飲むかどうかを問題にする場合、「コンプライアンス」という言葉が使われます。しかしながら近年、欧米では「アドヒアランス」という言葉を使おうという気運が高まってきています。指示されたことに忠実に従うというより、患者が主体となって、「自分自身の医療に自分で責任を持って治療法を守る」という考え方が支持されてきているからです。特に生活習慣病の治療や禁煙補助療法など、長期に渡って服薬の必要があり患者の主体的意識が重要な分野で、この考え方が強調されるようになってきています。日本ではまだアドヒアランスの概念が認識されているとはいえませんが、今後は、ぜひこの考え方を定着させていくべきでしょう。
CARPE-P(Caduet Adherence Research Program and Education-PBM adherence Study) カープP試験は、カデュエットと降圧薬、スタチン製剤併用時におけるアドヒアランスを調査する目的で実施された後ろ向きコホート研究です。患者さんは、新たにCa拮抗薬とスタチン製剤の服用を開始する4,703例で、1)カデュエット服用群、2)ノルバスクとリピトール併用群、3)ノルバスクとその他のスタチン併用群、4)その他のCa拮抗薬とリピトール併用群、5)その他のCa拮抗薬とその他のスタチン併用群の5群に振り分けられ、180日間追跡しました。その結果、いずれの対照群と比べても、カデュエットは1錠での投与が可能なため、アドヒアランスが有意に高いという結果が得られました。
「服薬アドヒアランスが不良(あるいは低い)」とは、決められた通りに薬を飲まないことを示し、単なる飲み忘れの場合もあれば、意図的に飲まない場合もあります。決められた量より少なく飲むと、本来期待される治療効果が発揮されず、高血圧や高コレステロール血症では心血管系のイベントが発生する可能性があります。逆に、1回飲み忘れたので次にまとめて飲むというような、1度に飲みすぎる場合にも問題が発生する場合があります。アドヒアランスの不良によって、治療効果が出なかったり有害事象が発生したりすると、新たな治療が必要になるかもしれず、ひいては医療費への影響も考えられる。そういった問題意識から、日本における服薬アドヒアランスの現状について調査しました。 次に、国内の慢性疾患に関する服薬アドヒアランスについて、タイトルおよびアブストラクトから服薬アドヒアランスを検討していると思われる研究論文をレビューしたところ、服薬不履行率は平均で20.3%であったが、研究ごとに大きくばらついていました。この要因としては、調査方法がアンケートや面接などの主観的な方法によっているものが多く、また、アドヒアランスの定義も様々で、単なる「飲み忘れの有無」から、「服用が90%未満の場合」「適正時間に服用していない」などと異なることが上げられます。
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提供 : 株式会社スズケン | ||||
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