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<スズケンDIアワー> 平成21年12月24日放送内容より スズケン

選択的ニューロキニンNK1受容体拮抗制吐薬アプレピタント


福岡大学腫瘍・血液・感染症内科 教授
田村 和夫

icon 制吐薬の投与法と留意点

制吐薬の投与法

 アプレピタントの登場で、抗がん剤投与後24時間以内に起こる吐き気・嘔吐には5-HT3受容体拮抗薬を、24時間以降に起こる遅発性の嘔吐にはステロイドとアプレピタントを使用することが可能となり、高頻度に嘔吐をおこす抗がん剤を使用するときは、抗がん剤投与前からこの3剤を投与し、2日目以降にもステロイド、アプレピタントを使用して万全の吐き気・嘔吐予防策を講じます。シスプラチンのような処置をしないと90%以上のヒトで嘔吐する高リスクの薬剤では、アプレピタントを3日間、ステロイドを4日から5日間、5-HT3受容体拮抗薬を1日目に使用し、最大限の予防策をとります。
 30〜90%のヒトが吐く可能性がある中等度のリスクでは、ステロイドを3日から4日間、5-HT3受容体拮抗薬を1日目に使用し、予防します。それより吐くリスクの低い抗がん剤ではステロイドを1日目だけ、あるいはそれに吐き気止めとして使用できる抗うつ剤や胃腸を調節するお薬を追加します。ほとんど吐く可能性のない薬剤では、予防的な処置はとられません。アプレピタントの副作用としては、しゃっくりや便秘など、まれに経験するのみで、程度も軽いものが大半です。ただ、気をつけないといけないのは、一緒に使うステロイドや一部の抗がん剤の代謝・排泄に影響を与え、血液のなかの濃度を上昇させる例があることです。アプレピタントとステロイドを併用する場合は、ステロイドの量を半分に減らして使います。また、抗がん剤の場合は、副作用が増強したという報告はないようですが、副作用モニターを定期的に行います。反対に、血液を固まりにくくするワルファリンは、その効果が悪くなることがありますので、血栓症に注意をします。いままでの臨床研究からその効果をみてみますと、アプレピタントを使用しないと50%のヒトが嘔吐をおこしますが、アプレピタントを使うことによって30%に減らすことができます。
 このように、抗がん剤に伴う吐き気・嘔吐との戦いは、続いています。まだ、100%の吐き気・嘔吐抑制とまでいきませんが、最近、抗がん剤を受ける患者さんの顔は、以前にくらべますとあきらかに明るく、治療意欲も上がってきていることを感じます。ただ、気をつけないといけないのは、がん治療を受けるだけでもストレスですし、抗がん剤で胃を痛めるかたもおられます。胸やけや消化不良のような胃腸症状が強いヒトには胃腸薬を併用します。また、不安の強い患者さんにはロラゼパムなどの抗不安薬や不眠を訴える患者さんには睡眠薬を服用していただきます。

icon おわりに

 以前に抗癌剤をうって気分が悪くて激しく吐いた患者さんのなかには、次の治療の前の日から気分が悪く、治療当日、点滴のボトルを見ただけで吐くヒトもまれでなくおられます。患者さんによく話をきいてみますと、2-3割の方がそういった症状を訴えます。これを予期性嘔吐といって、いままでお話しした吐き気止めは効きません。その治療として有効性が確認されているのは、カウンセリングや行動療法でありますが、日本の医療機関には、カウンセラーを置き、精神科的治療を行うだけの余裕がありません。したがって、抗不安薬を服用していただき、短時間ですがお話をできるだけ聞いて患者さん・家族と副作用に対処しているのが現況であります。繰り返しになりますが、この予期性嘔吐を防ぐ意味でも、初回治療のときにアプレピタントを含む制吐薬を十分使って吐き気・嘔吐をおこさせないようにすることが重要です。また、不安や胃腸の調子が悪い場合には、我慢しないで医師・看護師に訴えてください。それらを、できるだけコントロールして、がんの治療を最後までやりとげ、がんを治しましょう。

 

提供 : 株式会社スズケン



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