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<スズケンDIアワー> 平成22年2月11日放送内容より スズケン

がん化学療法に伴う腫瘍崩壊症候群と高尿酸血症治療薬 ラスブリカーゼ(遺伝子組換え)


東京慈恵会医科大学内科学(腫瘍・血液) 准教授
薄井 紀子

icon TLSの対応法について

 TLSが発症し、急性腎不全、不整脈、電解質異常をきたしますと、血液透析を回しながら、ICUなどの集中治療室で、強力な支持治療で救命をはかります。この間は原疾患である腫瘍の治療は行えない状態となり、がん化学療法の十分な効果が得られなくなります。
 従って、ベストのTLS管理は、TLSを生じさせないこと、即ち予防を行うことにあります。臨床的TLS発生のリスクを正しく把握し、予防的治療を速やかに行いますが、中でも高尿酸血症の治療・予防は、重要な役割を果たします。
 すなわち、点滴静注による、1日に2から3Lの適切な水分補給をして、体表面積当たり1時間に80-100mLの尿を確保することと、アロプリノールやラスブリカーゼなど高尿酸血症の治療薬の投与が必要です。

icon アロプリノールについて

 アロプリノールは、ヒポキサンチン誘導体で、キサンチン酸化酵素を阻害して、ヒポキサンチンからの尿酸の産生を障害することで、効果をあらわします。これまでは、TLSの高尿酸血症では、主として用いられてきた治療薬です。
 TLSの予防としては、欧米では、成人の場合、体表面積当たり100mg/㎡を8時間毎に(最大で800mg/day)、小児の場合は50-100mg/㎡を8時間毎(最大で300mg/day)が経口投与で用いられます。経口投与が困難な場合は、1日200-400mgを1から3回に分けて経静脈的投与が行われています。しかし、我が国では、注射製剤は保険承認されておらず、経口投与で最大1日300mgが使用されます。
 アロプリノールは優れた高尿酸血症の治療薬ですが、治療前に高値となった血清中の尿酸濃度を減ずることはできませんし、他の抗がん薬との薬剤相互作用がしばしば問題になります。また、TLSでは、尿酸値はしばしば15mg/dLなど異常な高値を呈し、注射製剤がないため、経口投与ができない患者さんの治療は、困難を極めるという欠点があります。この点を解決すべく開発された薬剤が、ラスブリカーゼです。

icon ラスブリカーゼについて

 ラスブリカーゼは、尿酸を更に酸化してアラントインを生成する尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)として作用します。尿酸は水に溶けにくいために尿細管に沈着してトラブルを起こしますが、このアラントインは水溶性であるため、尿からどんどん排泄され、体外に出て行きますので効果的に血清中の尿酸値を低下させることができます。
 ほとんどのほ乳類はこのウリカーゼを体内に有していますが、人間は有していませんので、遺伝子組み換え技術を用いて、ラスブリカーゼは開発されました。
 TLS発症の高リスク患者さんを対象とした臨床試験で、ラスブリカーゼは体重当たり0.15〜0.2mgで安全性と有効性が検討されています。臨床試験時に高尿酸血症を有する65人の患者さんでは、ラスブリカーゼの投与で、血清尿酸値の平均値が9.7mg/dLから1.0mg/dLへと減少し、血清のリン酸値は治療から48時間で正常化し、血清クレアチニン値も、24時間以内に正常値に回復しています。血液透析を要するTLSに、進展した患者さんは1人もおらず、副作用や有害事象は臨床的に管理可能でした。
 小児において、TLS発症のリスクの高い、高悪性度リンパ腫や白血病を対象とした臨床試験では、アロプリノールとラスブリカーゼの比較試験が行われ、ラスブリカーゼ治療群で有意に有効性が高いことが示されました。
 成人においても、同様に、TLS発症リスクの高い血液腫瘍患者さんを対象にして、ラスブリカーゼ単独、アロプリノールとラスブリカーゼの併用、アロプリノール単独の3群の比較試験が行われました。そして、血清尿酸値の改善率はラスブリカーゼ単独治療群が有意に良好であるとの報告が出されています。
 これらの臨床試験の結果から、ラスブリカーゼは、副作用の管理は容易で、速やかに血清中の尿酸レベルを低下させることが示されました。国内でも臨床試験で本薬剤の安全性と有効性が確認され、2009年に保険承認となりました。ラスブリカーゼは、TLSの治療および予防として非常に優れた薬剤であることを理解して下さい。

 

提供 : 株式会社スズケン



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