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<スズケンDIアワー> 平成22年3月4日放送内容より スズケン

潰瘍性大腸炎治療薬 メサラジン腸溶性製剤


慶應義塾大学消化器内科 教授
日比 紀文

 本日は、潰瘍性大腸炎の治療において基本薬となる5-ASA製剤のなかで、最近認可されたメサラジン腸溶錠についてお話ししたいと存じます。

icon 潰瘍性大腸炎の病態

 潰瘍性大腸炎は、20〜30年前日本では少ない疾患でしたが、最近増加が著しく日常の診療でもよく遭遇する消化器疾患であります。20〜30歳代の若年者に好発し、再燃と寛解を繰り返すことが多く、社会生活におけるQOLが著しく障害される場合もあり、その有効な治療法の開発が切望されてきました。潰瘍性大腸炎は厚生労働省が指定する特定疾患のひとつですが、その中では、患者数が多い疾患の一つです。2008年度における潰瘍性大腸炎の医療受給者交付証の交付件数をみますと、その数は10万人を超えており、毎年、患者数は増加し続けております。難病と考えられてきましたが、さまざまな治療法が開発され、今では多くの患者さんが通常の生活を送れるようになってきました。

潰瘍性大腸炎:病期・症状・病変の広がり

 潰瘍性大腸炎は、粘血便や下痢を訴え、内視鏡でみると、血管透見像の消失、易出血性、びらんまたは潰瘍などを認め、炎症が活動している「活動期」と、症状が消失して内視鏡的にも炎症像のない「寛解期」に分けられます。多くの患者さんが、この活動期と寛解期を交互に繰り返します。
 この疾患は、持続性または反復性の下痢、腹痛および粘血便をきたすのが特徴で、病変が大腸に限局していますが、大腸粘膜がび漫性に侵され、多発するびらんや潰瘍を形成する原因不明の炎症性腸疾患です。
 その病型は大きく3つに分類されます。病変が直腸に限局する直腸炎型、病変が脾彎曲部を超えない左側大腸炎型、そしてほぼ大腸全体に病変が広がる全大腸炎型です。潰瘍性大腸炎は現時点では原因不明であるため、いまだに根本治療法はありません。その病態は、何らかの遺伝的素因を背景に、腸内細菌や環境因子の影響の下で過剰な免疫反応が引き起こされ、腸管の慢性炎症が惹起されていると考えられています。したがって、現在の潰瘍性大腸炎の治療は、こういった病態に関与している、それぞれの因子をコントロールすることが原則となります。すなわち炎症反応や免疫反応を抑えることです。活動期には炎症を抑えるための寛解導入療法、寛解期にはこれを可能な限り維持する寛解維持療法が内科的治療の基本となります。
 寛解導入療法はできるだけ速やかに寛解に導くことが重要で、一般的には5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤が基本薬として用いられます。寛解導入が困難な場合はステロイドを追加します。寛解導入した後はステロイドを減量しつつ、5-ASA製剤で長期の寛解維持療法を行います。5-ASA製剤やステロイドで十分な効果が得られない場合は、アザチオプリンやメルカプトプリン(6-MP)などの免疫調節剤をもちることがあります。潰瘍性大腸炎の治療で最も問題になるのはステロイド抵抗例とステロイド依存例など難治例への対応ですが、こうした難治例に現在試みられているのが、LCAPやGCAPNなど白血球除去療法、シクロスポリンの持続静注療法、最近認可されたタクロリムスの経口療法などです。
 潰瘍性大腸炎の基本薬である5-アミノサリチル酸製剤ですが、これまでのスルファピリジンとメサラジンに加え、pH依存性に大腸に入ってから薬剤を放出するメサラジンの腸溶製剤(アサコール®)が、2009年12月よりわが国でも潰瘍性大腸炎に対して適応が承認されました。潰瘍性大腸炎の主病変部である遠位大腸に高い濃度で薬剤を届けることが可能となり、より高い治療効果が得られることが期待できます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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