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<スズケンDIアワー> 平成22年3月25日放送内容より スズケン

抗うつ薬SNRI―デュロキセチン塩酸塩


杏林大学保健学部 教授
田島 治

icon デュロキセチンの薬理学的特徴

 ラットを用いた脳内透析法による実験では、デュロキセチンが用量依存的に前頭皮質におけるセロトニンとノルアドレナリンの細胞外の濃度を増加させることが明らかになっています。この作用はミルナシプランに比べてはるかに強力で、両方のモノアミンをバランスよく増加させる薬物であることが分かります。

ヒトのモノアミントランスポータ阻害能

 ヒトのモノアミンのトランスポーターを発現させて行った実験から阻害作用の強さを他の抗うつ薬と比較しても、その作用が強力なことが分かります。この場合は阻害定数が小さいほど強い薬物ということになり、セロトニンとノルアドレナリンの阻害作用の比をみても、9.4とややセロトニン阻害作用が強いものの、SSRIなどと比べてノルアドレナリン阻害作用も強いことが分かります。

ヒトのセロトニントランスポータに対する作用

 一方、PETを用いた研究で至適用量の検討を行われています。健常成人の脳内セロトニントランスポータの占有率はデュロキセチンの用量および血漿中濃度に比例して増加し、80%の占有率を得るには1日40mg以上が必要なことが示されています。
 代表的な抗うつ薬のスクリーングである強制水泳テストでもその抗うつ作用の特徴が示されています。ラットないしマウスを用いたこのテストでは、水中で動物が動かずに浮かんでいる時間すなわち無動時間の短縮が抗うつ作用の指標となっています。デュロキセチンは用量依存的に無動時間を短縮するばかりでなく、とくにノルアドレナリン系の促進作用と考えられる壁をよじ登って逃げようとする登攀行動を増加させることが示されています。
 さらにラットの皮膚をホルマリンで刺激する疼痛モデルで有意に痛みの指標である四肢をなめる行動を用量依存的に減少させることが示されています。 一方デュロキセチンの薬物動態と特徴を紹介しますと、ヒトにおける代謝にはCYP1A2と2D6が関与しています。また臨床的に注意が必要な薬物相互作用として、CYP2D6の強力な阻害薬であるパロキセチンとの併用では臨床的に問題となる変化ないのに対して、CYP1A2の強力な阻害作用を有するフルボキサミンとの併用ではCmaxが2.4倍、AUCが5.6倍になるので注意が必要です。なおデュロキセチンは1A2の阻害作用は弱く、2D6の阻害作用は中等度あります。
 日本人での第一相試験でのPKパラメータをみますと、健康成人に対して20、40、60mgの単回および7日間反復投与した場合、Tmaxは約6時間、t1/2は約12時間でした。一方高齢者Cmax 1.3倍、AUCが1.6倍、t1/2が約16時間になりますので処方上注意が必要です。

icon わが国における臨床試験結果

 次にわが国で行われた臨床試験、すなわち短期および長期投与試験の結果をみたいと思います。
 6週間のプラセボおよびパロキセチンを対照とした二重盲検試験の結果では、プラセボ群との2群比較で有意差が認められています。

わが国の長期投与試験の結果

 わが国で行われた52週間の長期投与試験における、HAM-D17合計評点の変化量をみても、8週間以降も順調な改善傾向が認められています。

うつ病の再燃予防効果

 さらに海外で実施された長期の再燃予防効果をみた臨床試験でも、プラセボ群の再燃率が40%近いのに対して、デュロキセチン群では20%弱と有意な予防効果が示されています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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