東京医科大学 内科学第三講座 主任教授
小田原 雅人
2型糖尿病の治療は、食事療法、運動療法が重要であることは論を待ちませんが、その後の治療となりますと、経口血糖降下薬の投与ということになります。
ビグアナイド薬の作用機序
現在、市販されています経口血糖降下薬は6種類あります。長い間、5種類使われていました。その中で、一番古くから使用されているのがSU薬(スルホニル尿素薬)です。それに続いてビグアナイド薬、世界的に最も使われているのはメトホルミンという薬ですが、ビグアナイド薬は長い歴史がありながら、以前、フェンホルミンというビグアナイド薬の乳酸アシドーシスの副作用発現により、余り使われない時代が続いていました。
ビグアナイド薬は、肝臓からの糖の放出を抑制するのが主な作用機序で、筋肉へのブドウ糖の取り込み促進作用もあります。作用機序もだんだん解明され、AMPキナーゼという酵素を活性化することがわかっております。この酵素は運動によって活性化される酵素のひとつで、運動で得られる効果の一部が服薬によって得られる可能性があるということで注目されています。
UKPDSでのビグアナイド薬の成績
ビグアナイド薬(特にメトホルミン)が世界的に再び使用されるようになった重要な契機は、UKPDSという大規模臨床試験です。UKPDS34という論文で発表されていますが、UKPDSの試験の中にBMIが25以上の方、肥満傾向を示す2型糖尿病の方1704名を対象にしたビグアナイド薬メトホルミンを投与する試験があります。

この試験の心筋梗塞をエンドポイントとした解析では、メトホルミン群と通常療法群の比較で、39%と有意(P=0.01)な心筋梗塞の抑制効果が示されています。
すなわち、このUKPDSでは、肥満傾向のある方にメトホルミンを投与して、血糖を下げるとことにより、心筋梗塞が観察期間中に有意に抑制されていたという極めて良好な結果が得られました。また、死亡も36%と有意に抑制されていました。
1997年にUKPDSの本試験は終了しましたが、その後の10年間、長期のフォローアップのデータがとられ、2008年の9月にその追跡結果が発表になりました。

そのメトホルミン療法の群では、平均フォローアップ期間が8.8年でしたが、細小血管症、大血管障害といった2型糖尿病の合併症の総和を主なエンドポイントとしますとUKPDS終了時に当初32%と有意に抑制されていましたが、10年後の2007年でも21%と合併症の総和の抑制が認められ、P値0.013という極めて良好な結果でした。そのほか、心筋梗塞や総死亡も有意な抑制効果が10年間続いており、メトホルミン療法による遺産効果(Legacy effect)と呼ばれています。すなわち、当初からのメトホルミンの治療により、長期的にも合併症の予防効果が持続することがわかったわけです。血糖値の差がなくなってから10年間、平均で8.8年間たっても合併症が抑制されるという、驚くべき結果でした。
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