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<スズケンDIアワー> 平成22年4月8日放送内容より スズケン

DPP-4阻害糖尿病治療薬 ビルダグリプチン


兵庫医科大学糖尿病科 教授
宮川 潤一朗

icon はじめに

 今年(2010年)1月に製造承認された選択的DPP-4阻害薬ビルダグリプチンは、1998年Edwinらによって合成された2-シアノピロリジン誘導体です。
 ビルダグリプチンは、インクレチンと総称される、消化管ホルモンのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)及びGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)を分解する酵素であるDPP-4(ジペプチジルぺプチダーゼ-4)を選択的、かつ可逆的に阻害することで、2型糖尿病の患者さんの血糖を正常にコントロールする2型糖尿病治療薬です。

ビルダグプリチンの作用機序

 インクレチンは、食事の摂取に伴い消化管から分泌され、β細胞に作用してインスリン分泌を促進すると同時に、余分なグルカゴン分泌を抑制することで血糖をコントロールする消化管ホルモンの一種ですが、一方で、分泌後に直ちにタンパク分解酵素であるDPP-4によって分解され、不活化されてしまいます。ビルダグリプチンは、この酵素DPP-4を阻害することで、内因性の活性型GLP-1濃度を高め、血糖降下作用を示すという、新規の作用機序を持つ経口投与可能な2型糖尿病治療薬として開発されました。

icon 2型糖尿病におけるインスリン・グルカゴン分泌動態

 さて、2型糖尿病では、膵β細胞機能障害によるインスリンの分泌能の低下や、インスリン抵抗性などによりインスリン作用不足が生じることで、高血糖の状態が持続します。
 健常人では、食事により消化管に糖質などを含む食物が流入してくると、インクレチンホルモンが消化管から分泌され、それによりβ細胞からインスリンの分泌が増加し、グルカゴン分泌は抑制されて血糖値のホメオスターシスが保たれます。しかし、2型糖尿病患者においては、β細胞のインスリン分泌およびα細胞のグルカゴン分泌が正常に機能しておらず、食後に血糖値が上昇しても十分なインスリンの分泌増加や、グルカゴンの分泌抑制が起こらず、血糖値を正常に保つことができません。

2月糖尿病患者におけるインスリン・グルカゴン分泌動態

 インスリンは、体内で血糖値を下げる唯一のホルモンですが、2型糖尿病では、β細胞の機能障害によりインスリン分泌能が診断前から徐々に低下しており、診断時にはすでに正常の約50%に低下していると言われています。また、グルカゴンは、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンの分解などを促進して血糖値を上げる生体内で最も強力な血糖を上げるホルモンの一つですが、2型糖尿病においては、α細胞の機能障害により、グルカゴンが過剰に分泌され、肝臓での糖産生を亢進させることが考えられております。
 それに加えて、2型糖尿病では、末梢組織においてインスリンに対する感受性が低下し、十分にインスリンが作用しない、すなわち、インスリン抵抗性などによりインスリン作用不足が生じています。
 以上のことから、β細胞の機能障害によるインスリンの分泌低下と、α細胞の機能障害によるグルカゴンの分泌過剰に伴う肝糖産生の亢進、さらにインスリン抵抗性による筋肉、肝、脂肪組織への糖取り込み低下の結果、2型糖尿病では、高血糖が引き起こされると考えられます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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