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<スズケンDIアワー> 平成22年4月8日放送内容より スズケン

DPP-4阻害糖尿病治療薬 ビルダグリプチン


兵庫医科大学糖尿病科 教授
宮川 潤一朗

icon ビルダグリブチンの国内臨床試験結果

 続いて、ビルダグリプチンの国内臨床試験結果ですが、国内では2型糖尿病患者974例での臨床試験11試験を実施し、有効性、安全性が確認されました。

HbA1cの変化:用量依存的に低下

 日本で繁用されているαグルコシターゼ阻害薬のボグリボースとビルダグリプチンの比較をした国内臨床試験の結果では、各々の群に薬剤を12週間投与してHbA1cへの効果を検討したところ、ビルダグリプチン投与群ではベースライン(投与前)と比較して0.95%の低下が認められたのに対し、ボグリボース投与群では0.38%の低下とビルダグリプチン群はボグリボース群と比較して有意なHbA1c低下が認められました。また、空腹時血糖値についても、投与12週後にはビルダグリプチンで24.1mg/dLの低下が認められたのに対し、ボグリボースでは7.8mg/dLの低下で、HbA1cと同様にビルダグリプチン投与群で有意な空腹時血糖の低下が認められました。また食事負荷試験の結果、食後血糖2時間値はビルダグリプチン投与群でボグリボース群と比較して有意に低下しました。以上の効果により、HbA1cが6.5%以下に到達した割合はビルダグリプチン群で約50%であり、ボグリボース群の24%と比較して有意に高率でした。

HbA1cの変化:グリメピリドへの追加投与で・・・

 さらに、SU薬への併用効果を検討した結果では、ビルダグリプチンの追加投与によりHbA1cは約1%の低下を認めました。以上のことからビルダグリプチンは単独投与においてもあるいはSU薬との併用においてもすぐれた効果を示すと言えます。
 さらに、日本においては1年間、海外では2年間の長期投与を行った結果、HbA1c低下効果は維持され、体重の変化も僅かでした。このことからビルダグリプチンの効果は減弱することなく長期的に使用可能な薬剤と考えられます。
 さて、ビルダグリプチンの安全性についてですが、国内で実施された臨床試験において、883例中240例(27.2%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。承認時までの集計での主な副作用は空腹感30例(3.4%)、便秘27例(3.1%)、無力症19例(2.2%)等でした。重大な副作用として肝炎、肝機能障害、血管浮腫、低血糖症が報告されております。肝機能関連障害と血管浮腫については海外で認められているものの日本での報告はありません。低血糖については、国内臨床試験で9例に認められており、高頻度とは言えないものの、併用薬剤によっては低血糖の頻度も上昇することも考えられます。例えばSU薬への併用の場合は、SU薬の量を調整することも重要でしょう。

icon ビルダグリプチンの位置付け

 以上のようなビルダグリプチンの効果および副作用などの状況を踏まえて、日本人の糖尿病治療での役割を考えてみたいと思います。日本人の2型糖尿病はインスリン分泌が低下しており、初期には食後高血糖が病状の進行に伴い空腹時血糖高値を示すと言われております。ビルダグリプチンは内服薬であり、またHbA1cを約1%低下させること、低血糖が単独では起きにくいこと、およびβ細胞保護作用を持つ可能性があることを考えれば、HbA1cがそれほど高値に至っていない糖尿病の早期から第一選択薬のひとつとして投与すべき薬剤といえます。 ビルダグリプチンは日本においては2番目に発売されるDPP-4阻害薬ですが、海外での臨床試験において、2型糖尿病患者に対する単独療法、及び既存の経口糖尿病薬との併用療法で、その有効性と安全性が確認されたことから2007年9月に欧州連合(EU)で承認されており、現在では、韓国、シンガポールをはじめ世界約70ヵ国で承認され、すでに多くの患者さんに使用されています。

icon おわりに

 最後に、選択的DPP-4阻害薬ビルダグリプチンは、既存治療ではみられなかったグルカゴンの過剰分泌の抑制や、動物実験のデータではありますが膵臓のβ細胞の再生や増殖がみられるなど、これまでにない新しい作用を併せ持っており、糖尿病治療戦略に大きな影響を与える可能性を持っています。新しい作用機序の薬剤であるため、今後、有効性の確認とともに安全性の確認を十分にしながら長期投与でのデータを集積していき、薬剤の位置付けを確立していくことが望まれます。

 

提供 : 株式会社スズケン



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