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<スズケンDIアワー> 平成22年4月29日放送内容より スズケン

日本薬学会第130年会


岡山大学大学院医歯薬学総合研究科分子微生物学 教授
土屋 友房

icon 安心と安全を担う薬学:創薬から医療に亘る最前線研究

 日本薬学会は、「健康とくすり」に関係する研究者、教育者、技術者、薬剤師、行政に係る人などが、学術上の情報交換・意見交換などを行い、学術文化の発展と人類の健康や福祉の向上に貢献することを目指す学術団体です。そして年会は日本薬学会にとって最大の行事です。
 130年会では、「安心と安全を担う薬学:創薬から医療に亘る最前線研究」というキャッチフレーズを掲げました。すなわち私ども組織委員会は、国民の皆さまの健康と薬に関する「安心」と「安全」を最重要課題と位置付け、最新情報の交換や意見交換を行う場を設けるというコンセプトで130年会を開催しました。そして、「新薬の開発から医療現場での医薬品の適正使用」に至る、健康と薬に関する多くの講演会や研究発表が行われました。実際、30以上の特別講演、80以上のシンポジウム、3900題以上の研究発表が行われました。この年会へのアカデミックな参加者は9200人にのぼりました。多くの方々のご参加をいただき、非常に盛会であったことは、組織委員長として大変ありがたく思っています。
 次に、いくつかの企画や発表について簡単に説明させていただきます。

市民講演会

 まず、年会の前の日に市民講演会が行われました。「食の安全と医薬品の安全」というテーマのもとに、国立医薬品食品衛生研究所の手島玲子先生と、慶応義塾大学薬学部の望月眞弓先生のお二人に、講演していただきました。手島先生には「食の安全性を考える」という演題で、また望月先生には「薬と上手につき合おう」という演題でお話しいただきました。講演の後で、多くの市民の皆さんが講師の先生に質問しておられました。予想を超える多くの市民の皆さんに参加していただき、食の安全と医薬品の安全に関する市民の皆さんの関心の大きさと強さを、私どもは再認識しました。
 年会の初日の最初に、薬学会の松木会頭が「日本薬学会学術活動の展望」というタイトルで講演されました。松木会頭は、「公益法人化への対応」、「学会活動の長期的展望の明確化」、「国際交流の促進」、などについて、会員に対して熱っぽく語られました。

130年会特別企画の例

 続いて、理事会企画による「薬物乱用防止について薬学研究者と薬剤師が知っておくべきこと」というシンポジウムが行われました。医療面で役立っている麻薬もありますが、一方で麻薬を含む特殊な薬物の乱用が大きな社会問題になっています。大学生が大麻取り締まり法で検挙されたり、芸能人が薬物乱用で検挙されたり、場合によっては死者が出たりしています。「このような問題を防止するために日本薬学会も貢献すべきである」という考えから、このシンポジウムが企画されました。「薬物乱用の現状とその防止対策」、「薬物乱用防止における学校薬剤師の役割」、「大麻の危険性」、「医療用麻薬による、がん疼痛(とうつう)治療と精神依存」などの講演が行われました。
 続いて、薬薬薬連携シンポジウムが、「6年制薬剤師教育に対する考え、取り組み、期待」というテーマで行われました。薬薬薬連携とは、薬学部、薬剤師会、病院薬剤師会、の連携のことです。6年制の薬剤師教育が始まって4年が経ちました。いよいよこの4月以降、6年制薬剤師教育の目玉である長期病院・薬局実習が始まります。この長期実習で薬学生は、現場の病院薬剤部と薬局の薬剤師の先生方に、薬剤師としての実務を教えていただくことになります。このシンポジウムでは、日本薬剤師会の児玉会長、日本病院薬剤師会の堀内会長、6年制教育に関する法整備などでご尽力いただいた藤井基之前参議院議員の三氏が、それぞれの立場から講演されました。2年後には、6年制となって最初の薬剤師が誕生します。高度な知識・技能・態度などを身に付けた立派な薬剤師の誕生には、薬薬薬の連携が極めて重要です。このことが今回の年会の数字にもよく現れています。「薬学教育」などに関する分野で175題の一般発表がありましたが、そのうち27%が薬学部と臨床現場(すなわち病院および薬局)との共同発表でした。これは昨年の17%を大きく上回っています。薬学部と臨床現場の連携は今後益々盛んになるものと思われます。
 その他にも、新しい薬学教育制度に関するシンポジウムや、薬剤師リカレント教育に関するシンポジウム、専門薬剤師制度に関するシンポジウム、医薬品情報を医療現場で生かすためのシンポジウム、医薬品の安全性確保に関するシンポジウムなど、多くのシンポジウムが行われ、活発な議論が行われました。
 組織委員会は、130年を記念して、「医薬品の創薬・臨床評価・適正使用」に関する薬学横断的なシンポジウムをいくつか企画しました。たとえば、「体内時計を利用した創薬から治療戦略」、「グリア創薬の最前線と可能性」、「薬の安全・安心を作り育てる」、「脳の働きとその異常」、「創薬と臨床評価」、「創薬を進化させる有機化学の力量」、「分子標的治療の新たなる射程」などです。また、関連して、「日本における臨床評価」、「米国における臨床評価」や「韓国における臨床試験・研究の現状」などの講演もありました。これらのシンポジウムは多くの参加者の興味を引き、大変に盛況でした。
 ところで、現在iPS細胞が大変注目されていますが、「創薬における幹細胞研究の動向:iPS細胞の企業利用を中心として」というタイトルの製薬工業協会企画のシンポジウムも行われました。製薬企業としてどのようにiPS細胞の活用を目指しているのか、その方向性が示されました。
 今回の年会では、海外からお招きした方々による特別講演が7つありました。米国、欧州、中国、台湾など世界で活躍しておられる先生方を幅広くお呼びし、世界の最先端研究の成果を話していただきました。
 一般発表では、3900題以上の発表がありましたが、それらのうち大変興味深い内容のもの5%、約200題を、ハイライトとして選び、講演ハイライト集としてまとめ、冊子を発行しました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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