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<スズケンDIアワー> 平成22年6月3日放送内容より スズケン

ARB・カルシウム拮抗薬配合剤バルサルタン・アムロジピンベシル酸塩


大阪府立急性期・総合センター 院長
荻原 俊男

icon はじめに

 高血圧は脳卒中や心筋梗塞などの心血管病の危険因子であり、脳卒中による死亡は減少傾向であるものの心疾患での死亡は増加傾向であり、日本における高血圧の罹患数は4000万人とされており今後さらなる増加が推測されている。この点から高血圧治療は社会的にも重要であり、治療の最終目的は心血管病の発症を予防することと言える。高血圧に対する厳格な血圧コントロールにより、心血管病の発症抑制と死亡率の低下が、多くの大規模臨床試験やそのメタ解析から明らかにされている。
 しかし、高血圧患者のうち約半数が降圧目標値を達成していないことから、より積極的な高血圧治療が必要と考えられる。高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)では、II度やIII度の高血圧あるいは高リスクの高血圧においては初期から併用療法を考慮すべきとしており、降圧目標を達成し臓器保護をはかるためには併用療法の役割はますます大きくなっていくと推察される。
 併用療法の問題点としては、薬剤の各用量と組み合わせが挙げられる。各降圧薬の24時間血圧での降圧度は用量依存的であるが、同一用量比(同一力価)での収縮期血圧低下度はARBで最も大であり、拡張期血圧低下度はβ遮断薬次いでCa拮抗薬で大であると報告されている。併用の組み合わせについて大規模臨床試験における検証は多くないが、ASCOT-BPLA試験ではβ遮断薬+利尿薬に比べてCa拮抗薬+ACE阻害薬で心血管イベントを約10%抑制し、ACCOMPLISH試験ではACE阻害薬+利尿薬に比べてACE阻害薬+Ca拮抗薬で心血管イベントを約20%抑制していた。これらのことは、Ca拮抗薬とRA系抑制薬の併用による有用性を示唆するものである。また、JSH2009ではRA系阻害薬と利尿薬あるいはCa拮抗薬、Ca拮抗薬とβ遮断薬の組み合わせを推奨している。さらに、実地臨床医を対象とした降圧薬配合剤のアンケート調査では、Ca拮抗薬+ARBの組み合わせが最も望まれており、臨床試験成績と実地臨床での経験が一致していることが伺える。
 また、併用療法により服用錠数が増え利便性の低下が懸念されるが、海外では合剤化することにより医療費の抑制やアドヒアランスの改善が図られることが報告されている。米国ではRA系抑制薬+利尿薬、β遮断薬+利尿薬あるいはRA系抑制薬+Ca拮抗薬などの30種類ほどの合剤が臨床に供されている。
 国内でもARBと利尿薬の合剤が臨床使用され、次いでARBとCa拮抗薬の合剤が使用可能となることから、今後より一層合剤を選択する機会が増えると推察される。

icon バルサルタン・アムロジピンベシル酸塩について

 バルサルタン・アムロジピンベシル酸塩(商品名:エックスフォージ®配合錠)は、ARBのバルサルタン80mgとCa拮抗薬のアムロジピン5mgとの合剤であり、2010年1月に製造承認され、今春発売される。
 本配合錠の成分であるバルサルタンは、AT1受容体への選択性が30,000倍とARBの中で最も選択性が高く、高血圧と心血管病発症の関連性(cardiovascular continuum)に着目したVal-HeFT、VALIANT、VALUEなど多くの大規模臨床試験において、その強い降圧効果と臓器保護効果が評価され世界で最も使用されているARBである。
 一方、アムロジピンは第三世代の長時間作用型Ca拮抗薬であり、優れた降圧効果と短時間作用型Ca拮抗薬に比べ副作用が少ないことから広く臨床で使用されている。心血管病予防についてもPREVENT、ALLHAT、CAMELOT、ASCOT-BPLAなどでその有効性が証明されている。
 合剤開発の基本は服用薬剤数の減少によるアドヒアランスの向上であり、薬理学的には薬剤併用の考え方と同様であり、各薬剤単剤より併用で相乗的な降圧効果が得られること、副作用発現が相加・相乗的でなく両者で補完し合うことなどを考慮しなければいけない。アムロジピンは平滑筋収縮抑制による末梢血管拡張作用が主であり、拡張期血圧低下効果に優れている。しかしながら、強力な血管拡張作用により反射性頻脈あるいは浮腫といった副作用が問題となることがある。バルサルタンは高血圧の成因の一つであるRA系を抑制することから、交感神経の緊張抑制作用を併せ持つこと、浮腫を軽減することから、両者の併用は理にかなっている。さらに、アムロジピンは代謝系の悪影響がないことも利点で、バルサルタンによるインスリン抵抗性改善などの作用は拮抗されない。
 日本人を対象としたJikei Heart StudyやKyoto Heart Studyでは、Ca拮抗薬中心の従来治療とバルサルタン追加で心血管病の発症を検討された。いずれの試験ともにバルサルタン追加による血圧コントロールの向上と従来治療に比較して有意な心血管病発症抑制が示された。さらに、Kyoto Heart Studyにおいては、糖尿病の新規発症もバルサルタン追加群で抑制が認められたとしている。これらの試験結果もARBとCa拮抗薬との合剤の意義を示すものと考えられる。

 

提供 : 株式会社スズケン



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