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<スズケンDIアワー> 平成22年7月1日放送内容より スズケン

帯状疱疹後神経痛治療薬プレガバリン


順天堂大学麻酔科学・ペインクリニック講座 先任准教授
井関 雅子

icon プレガバリンの帯状疱疹後神経痛に対する作用機序

プレガバリンの作用機序

 神経障害性疼痛発症の際には、電位依存性Caチャネルが活性化され、神経伝達物質であるグルタミンなどが過剰に放出される。また脊髄の後角シナプス後ニューロンにおいて、痛みに関与している受容体の活性化により脱分極が生じると、電位依存性Ca2+チャネルを介してCa2+が流入し、NMDA受容体が活性化され、さらに大きな脱分極となり、興奮伝達の過剰な促進が起こり、痛みとして認識されます。
 プレガバリンは、興奮した神経系においてCaチャネルのα2-δサブユニットに結合し、Caの流入を抑制し、グルタミン酸、サブスタンスP、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経伝達物質の放出を抑制し、鎮痛効果を発揮すると考えられています。
 すなわち、帯状疱疹後神経痛の発生機序にもありましたように、脊髄の異常興奮や感作を抑制することで、帯状疱疹後神経痛の痛みの緩和を行っていると考えられます。

icon プレガバリンの帯状疱疹後神経痛への有用性

末梢性神経障害性疼痛の治療アルゴリズム

 海外における様々な薬剤の無作為化比較試験(RCT:randomized controlled trial)の結果に基づいた報告では、神経障害性疼痛の治療薬として、プレガバリンは信頼性の高い多数のエビデンスによってその有効性や安全性が実証されております。帯状疱疹後神経痛では150-300mg/日の有効率は30%弱であるが600mg/日に増量することで50%前後の有効率が認められております。その結果、国際疼痛学会およびカナダ疼痛学会、英国疼痛学会のガイドラインにおいて、神経障害性疼痛治療の第1選択薬の1つとして位置づけられています)。また、欧州神経学会では、疾患別に治療指針を提示しているが、帯状疱疹後神経痛に対しプレガバリンは、やはり第1選択薬として推奨されています。
 さらにプレガバリンは、疼痛の軽減ばかりでなく、睡眠障害や気分障害を改善することが認められており、QOL向上の観点からも意義があると考えられます。

icon プレガバリンの薬剤特徴

 プレガバリンは、肝臓で代謝されず、チトクロームP450の誘導・阻害作用がないため、薬物相互作用を起こしにくく、使用しやすい薬剤です。体内吸収は速やかであり、約一時間後には最高血中濃度に達します。生物学的利用率が90%以上と高く、半減期は約6時間であり、血中濃度の安定には1〜2日を要します。150mg/日から投与を開始し、その後は認容性を勘案しながら150mg/日ずつ漸増するが、最大投与量は600mg/日です。腎機能障害者や腎機能が低下していることが多い高齢者に投与する際は、投与量の調整が必要です。従って、腎機能低下時には、クレアチニンクリアランスに基づいて投与量を変更する必要があります。服用者の1/10以上の確率で生じる副作用は、めまいと易疲労です。1/100以上の確率で生じる副作用には、食欲増加、高揚、混乱、いらだち感、注意散漫、記銘力の低下、ろれつが廻りにくいなど、いずれも中枢神経系の副作用です。高齢者では、転倒事故などに注意が必要であります。副作用対策として、ふらつき、眠気が著しい場合には、総量の減量(1回量の減量または回数を減らす)を行ないます。

icon 本邦での期待

 本邦は、他国に例をみない、超高齢者の多い国となっており、帯状疱疹後神経痛に苦しむ患者も多く存在します。プレガバリンは、他の疾患のために薬剤を服用している患者も多いため、肝臓代謝に無関係であることが、非常に大きな利点である。即ち、どんな患者にも、併用しやすい薬剤であります。また、副作用も少ないため、処方を継続しやすい薬剤であるが、高齢者では、ふらつき、転倒だけは十分に注意すべきであります。いずれにしても、本邦の帯状疱疹後神経痛の治療薬として、非常に期待できる薬剤であります。

 

提供 : 株式会社スズケン



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