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<スズケンDIアワー> 平成22年7月22日放送内容より スズケン

ドライアイ治療用点眼薬 ジクアホソルナトリウム


慶應義塾大学 眼科学 教授
坪田 一男

 きょうのお話は、「ジクアホソルナトリウム」についてです。最近、「ジクアス」という商品名で申請され、厚生労働省からドライアイへの治療薬として認可されました。現在、発売準備中ということで、この秋から冬にかけて、日本でもようやく使えるようになると非常に期待されているドライアイの新しい薬です。
 本日は、このドライアイの新しい治療薬「ジクアホソルナトリウム(商品名ジクアス)」についてお話をさせていただきます。

icon ドライアイとは

 認知度は大分上がってきましたが、「ドライアイって、よく考えてみると何なの?」と。ドライ-アイなので、目が乾くということは皆さんイメージされていますが、その実態については、あまり御存じない方もいらっしゃいますので、そのお話をしてから、「ジクアホソルナトリウム」についてお話させていただきたいと思います。

ドライアイの定義

 ドライアイは、目の不定愁訴(たとえば、目がゴロゴロするとか、目が重たい)に加えて、最近になって、視力にも影響を与える病気だということがわかってきました。
 ドライアイ研究会の試算では、日本のドライアイ患者数は800万人と推定していますが、京都府立医科大学の木下先生、横井先生らの試算によりますと、2200万人以上と報告されています。私たちの研究でも、コンピューターのユーザー(VDTユーザー)では女性が20%、男性が10%の有病率があることを確認しています。もはや国民病と言えるほど大きな問題となってきています。
 このドライアイに対して、先ほど「視力に対して影響がある病気と考えられるようになってきた」と申し上げましたが、このところをお話したいと思います。
 ドライアイの患者さんが診察のときに、しばしば、「何となく見にくいんです」とか、「夕方になるとぼやけてきます」とおっしゃいます。ところが、視力を測ってみますと、皆さん1.2とか、1.5とかの良い視力です。ですから、「心配ありません。視力は良いですよ」ということになりますが、それでも患者様は、「見にくい」とおっしゃいます。このように場合、従来はどのように解釈してよいか解らなかったのですが、最近になって、涙の安定性が視力に対して非常に重要であることがわかり、この問題がクリアになってきました。

涙の3層構造

 私たちの視力というのは、外界からの視覚情報です。光が目の中に入り網膜に焦点を結びますが、光が目の中に入るときに真っ先に当たるところが、角膜と呼ばれる透明な膜なのですが、実はその前にもう一枚膜があります。それが涙液層です。この涙液層は、まばたきのたびに新しく作成され、いつも目の表面を覆っています。涙液層は、普通は10秒以上安定していますので、例えば1分間で6回以上まばたきをしていれば(通常は20回ぐらいまばたきしています)、目の表面はいつもきれいな膜が張っていることになります。

BUTショートタイプ

 ところが、ドライアイの患者さんでは、この涙液層の安定性が非常に悪いことがわかってきました。これを臨床的には、tear breakup time(涙液層破壊時間:BUT)と呼んでいますが、このBUTが短くなることを測定することによって評価することができます。普通の方ですと、目をあけた状態でも、ある程度涙の表面が安定していますから、きれいな像が網膜の中に写し出されるわけですが、ドライアイの患者さんは、目をあけた瞬間、またはあけて数秒すると、もう涙の層が崩れてしまい、言ってみれば、目の表面がでこぼこになってしまいます。それで「見にくい」という状態になります。目をあけた瞬間は、一瞬でも涙がきっちりと乗っていますから見える。けれども、1秒、2秒、3秒、4秒とたつうちに、涙の層が崩れて見えなくなってしまう、ということになります。

FVAM

 そこで、私たちのチームでは、新しい視力計である実用視力計を開発しました。この実用視力計は、目をあけて1分間の視力を測定します。1分間にわたってモニターに映し出される視標と、手もとのジョイスティックを使い、継続して視力を測ります。これで検査しますと、普通の方は、1.0以上の視力がずっと保持できるのですが、ドライアイの患者さんはそれを保持できなくて、1.0が0.9、0.8、0.7、0.6と下がっていく人たちが多く存在することがわかったのです。これはまた、ドライアイの治療によって改善することもわかってきました。
 我々は、よく、風速、風力にたとえて視力を表現しています。たとえば、台風が来たときに、最大瞬間風速が15メートルなどと言います。言ってみれば、私たちが今、日常生活、または日常の診療で使っているこの視力というのは、最大瞬間風速にあたります。一瞬でも見えれば、その人の視力ということになります。ところが、日常生活での視力は、むしろ最大よりも平均値です。風でいえば、どのぐらい被害があるかということに対しては、最大瞬間風速が必要ですけれども、風力発電をすることになりますと、むしろ風力の平均風速の方が重要になります。同じように、日常生活において、見え方というのは、瞬間的に見える最大の視力ももちろん大事ですが、平均した視力が重要であり、実はドライアイ患者さんではそれが非常に低下しているということがわかってきました。

 

提供 : 株式会社スズケン



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