帝京大学内科学 教授
江口 研二
きょうは、抗がん剤の化学療法に伴う悪心、嘔吐に対する薬物療法についてお話したいと思います。
悪心・嘔吐とは

「悪心」というのは、吐きたくなりそうな不快感、「嘔吐」は、完全に胃内容をもどすことです。抗がん薬投与時に引き起こされる悪心・嘔吐に対する制吐剤の効果判定には、悪心も含めた完全な予防効果と、嘔吐に関して完全に予防できることを指標にしています。
悪心・嘔吐の病態生理

延髄に嘔吐中枢があり、乗り物酔いなどは前庭神経を介した刺激が嘔吐中枢に信号を送りますが、抗がん剤の場合には、血中の抗がん剤が延髄のケモトリガーゾーンを介して、この嘔吐中枢に直接作用して、悪心・嘔吐をもたらします。
また、腸管壁にあるエンテロクロマフィン細胞(好銀細胞)から求心性の腹部迷走神経の信号を介して抗がん剤の悪心・嘔吐が生じます。即ち、抗がん剤に誘発される悪心・嘔吐の作用には、中枢性反射や末梢性の反射によるものがあります。
また、大脳中枢、すなわち高位中枢神経系の情動感覚を司るところに延髄嘔吐中枢から神経刺激が入り悪心・嘔吐を来します。
悪心・嘔吐出現に影響する因子
過去の大規模な臨床試験のサブ解析などから、アルコール摂取の多い人、男性などは、相対的に悪心・嘔吐に強いと言われています。その他、幾つかの関連するリスク因子があげられています。治療側の因子としては、抗がん剤の種類によって悪心・嘔吐を引き起こしやすさの程度に差があります。日本癌治療学会でまとめた化学療法に伴う制吐剤の新しい診療ガイドラインにまとめられております。ぜひ、ご参照ください。
抗がん剤使用に際して、薬物以外のがんの病態(消化管閉塞、脳転移、電解質バランス異常など)を考慮して悪心・嘔吐の対策を考えることが必要になります。
悪心、嘔吐に対する制吐剤の効果評価には、医療者の判断として、米国国立がん研究所(NCI)の副作用判定がありますし、患者側の主観的な評価として、ビジュアルアナログスケール(VAS)などのように、最悪から何もないまで長さ10cmの線に自己記入していただくこと、あるいは患者日誌を利用することなどがあります。
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