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<スズケンDIアワー> 平成22年9月2日放送内容より スズケン

セロトニン受容体拮抗型制吐薬 パロノセトロン塩酸塩


帝京大学内科学 教授
江口 研二

icon がん化学療法時における制吐剤開発の歴史

 抗がん剤に対する悪心・嘔吐の治療の夜明けとも言うべきものは、1963年にアメリカのモーテルが5FUを用いた消化器がん治療に際し、無作為化比較試験のデザインでプロクロルペラジンの有効性をプラセボを対照に明らかにしたことです。
 以後、シスプラチンなどの催吐性の抗がん剤が導入され、それに対して、例えば高用量メトクロプラミド(®プリンペラン)に、デキサメタゾンを併用することなどが1980年代に確立されました。その後、セロトニン受容体(5-HT3受容体)拮抗薬、さらにニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬が2000年代に登場しました。
 本邦では、昨年までの高催吐性がん化学療法に伴う制吐剤の標準治療は、デキサメタゾンと5-HT3受容体拮抗薬の併用でした。これらは、1980年代から1990年代にかけて数多くの臨床試験で明らかになったものです。しかし、急性期の悪心・嘔吐を、奏効率70%程度には軽減できますが、投与後3日目くらいから生じる遅発性の悪心・嘔吐に対しては50%程度あるいはそれ以下の有効率しかないというのが現状でした。診療ガイドラインに記載されていますが、高催吐性シスプラチン、あるいは中等度催吐性のサイクロフォスファマイド、ドキソルビシン、エピルビシン、その他の薬剤を化学療法のレジメンとして使う場合に、使用レジメンの催吐性によって制吐剤も使い分けることになっています。

icon 新しい制吐薬

 昨年から二つの新しい制吐剤が使えるようになりました。
 一つはNK1受容体拮抗薬で、サブスタンスPの介在する神経伝達物質シグナルを遮断するもので、NK1受容体拮抗薬;アプレピタントです。

NK-1R拮抗薬

 大規模臨床試験の結果からは、アプレピタント、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾンの三種類の薬剤による作用レジメンが現在最強の制吐作用を有するということで、標準的に使われるようになりました。

CQ薬物相互作用を考慮する

 使用上の注意としては、アプレピタントには薬物代謝酵素CYP3A4の阻害作用があり、デキサメタゾンと併用するときに、デキサメタゾンの血中AUC(曲線化面積)が高くなる特徴がありますので、アプレピタントを含む制吐剤レジメンの場合には、デキサメタゾンの投与量を通常の半量にしています。
 また、ワーファリン服用患者では、ワーファリンの効果が落ちるという報告がありますので、この場合にも注意が必要です。
 もう一つの新しい制吐剤はパロノセトロンで、第二世代といわれる5-HT3受容体拮抗薬です。

パロノセトロン

 従来の第一世代の5-HT3拮抗薬であるオンダンセトロンや、グラニセトロンなどに比べて5-HT3受容体に対する親和性が高いこと、薬理学的に非常に半減期が長くなっている(T1/2では40時間というデータが出ています)という特色を持っています。従って、従来は毎日使用しなければいけなかった5-HT3受容体拮抗薬が、パロノセトロンの場合には、第1日目に使えば、その効果が長く持続することになります。

 

提供 : 株式会社スズケン



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