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<スズケンDIアワー> 平成22年10月21日放送内容より スズケン

DI実例集(169)〜回答後の経過・転帰の記録を含めた質疑応答検索入力システム


昭和大学病院 薬剤部 主任
川上 明三

icon 本システムの有用性と今後の展望

 次に、本システムの有用性と今後の展望について事例を挙げ紹介します。

事例1

 事例1は、病棟看護師よりDIに依頼された質疑です。
 入院患者が、消毒薬である5%クロルヘキシジングルコン酸塩液を誤飲した可能性があり、中毒症状や対処法を教えてほしいというものです。5%クロルヘキシジングルコン酸塩液の推定摂取量は、飲んだとしても少量であるとのことでした。
 DI担当者が中毒情報の書籍類を確認したところ、少量の誤飲であれば、中毒症状はほとんどなく、あるとしても、消化管粘膜刺激作用で、具体的には悪心・下痢等である可能性が高いという情報を得たため、これらを報告すると共に、患者の状態を注意深く経過観察し、症状があれば対症療法するよう伝えました。また、当該病棟を担当する薬剤師にも同様に報告しています。
 質疑応答の当日夕方、病棟薬剤師から経過・転帰が報告され、当事例の患者さんは、精神的に不安定であること、看護師がベッドサイドで処置中に少し眼をはなしたすきに、5%クロルヘキシジングルコン酸塩液を患者が手にとってしまい、次に見たときには口から胸元にかけて液がこぼれていたということが分かりました。その際、患者は、飲んだかもしれないと言っていたとのことです。患者さんは、発見当初から消化器症状等はなく、念のため、水を飲ませましたが、患者の状態に変化はなかったとのことでした。
 本事例のような迅速性を求められる質疑応答では、患者背景を詳細に確認できない場合もありますが、病棟薬剤師が経過・転帰を調査し、また、記録することで、DI担当者が患者背景や回答の妥当性を知ることができました。
 今後ますますの臨床転帰情報の蓄積が必要ではありますが、薬剤師間の業務連携の強化につながり、患者の病態に適した情報提供が可能になると考えています。

 次に、質疑応答の分類の中で最も多い、配合変化の事例を紹介します。

事例2

 事例2は、病棟看護師より、DIに依頼された質疑です。ドキサプラム塩酸塩注射液を24時間持続静注したいが、2つの点滴ルートのうち、どちらのルートから投与したらよいか、というものでした。ルートの1つは、高カロリー輸液とヘパリンナトリウム注を24時間持続で静脈内投与されており、もう一方のルートでは、ミノサイクリン注とパニペネム注をそれぞれ1日2回に点滴静脈内投与されているとのことでした。
 DI担当者は、関連書籍等にて、ドキサプラム塩酸塩注射液と各薬剤との配合変化の試験データを調査しましたが該当するデータはなかったため、本質疑応答検索システムにて過去のデータを検索したところ、ドキサプラム塩酸塩注射液と高カロリー輸液を同一ルートで投与し、混濁したという報告がみつかりました。そこで、高カロリー輸液は、ミノサイクリン注とパニペネム注のルートに変更し、ヘパリンナトリウム注とドキサプラム塩酸塩注射液を同一ルートで投与することを推奨しました。なお、パニペネム注は配合変化の試験データより、高カロリー輸液との混和で力価が低下する可能性があったため、パニペネム注を投与中は高カロリー輸液を一時中止することも伝えました。
 2日後、病棟薬剤師より経過・転帰の報告があり、推奨されたルートで、ドキサプラム塩酸塩注射液を投与開始したが、ルートの外観変化やポンプ異常はなく投与できているとのことでした。また、患者の血液検査のデータにて、APTTやPT-INRの変化は見られていないこともあわせて報告されました。
 本事例では、試験データがない薬剤間の配合変化に関して、本検索システムを利用し、回答に役立てることができました。また、経過・転帰を調査、記載することで、外観変化や点滴ルートの異常の有無、使用された医薬品の効果が確認できました。
 本システムは、度重なる同様の質疑への迅速な対応および回答の均一化に有用と考えています。

icon おわりに

 今回は、当院薬剤部で使用している「質疑応答後の経過・転帰の記録を含めた質疑応答検索入力システム」をご紹介しましたが、本システムは質疑応答から経過・転帰の一連の記録をもとに、回答の妥当性や正確性を評価でき、医薬品情報提供の質の向上が可能となることがお示しできたと思います。
 今後は、一連のデータを蓄積し、規則性をもったデータベースに組み上げ、院内ネットワークの仕組みを構築し、今以上緊密な院内全医療職との情報共有化の向上に努めたいと考えています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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