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<スズケンDIアワー> 平成22年10月28日放送内容より スズケン

骨粗鬆症治療用ヒト副甲状腺ホルモン製剤テリパラチド(遺伝子組換え)


鳥取大学保健学科 教授
萩野 浩

icon テリパラチドの作用機序

 重度の副甲状腺機能亢進症では、骨量の減少が見られます。これは内因性PTH過剰の状態が持続するため、骨形成より骨吸収が促進して、骨量が減少し、二次性の骨粗鬆症を生じるためです。たとえば、ラットにヒトPTH(1-38)を持続注入した実験では、破骨細胞の分化を促進するRANKLの発現が増加し、オステオプロテゲリン(OPG)および骨芽細胞特異的転写因子、オステオカルシンなどの骨形成関連遺伝子の発現が減少することが確認されています。したがって、ヒトPTH(1-34)であるテリパラチドを、持続的に皮下投与すると、骨吸収が骨形成を上回るため、結果として骨量減少が生じます。ところが、テリパラチドを1日1回の投与頻度で、間歇的に投与すると、全く異なる骨の反応が得られます。テリパラチド間歇投与によって、骨芽細胞の分化が促進され、また一方で、骨芽細胞の細胞死(アポトーシス)を抑制します。したがってテリパラチド1日1回投与は、破骨細胞活性よりも骨芽細胞活性を選択的に刺激して、海綿骨と皮質骨の表面での新しい骨の形成を促進します。テリパラチドのこの作用によって、骨形成が急速に促進され、骨量を増加し、骨微細構造の改善が得られ、その結果、骨折リスクが低下します。

腰椎BMDの平均変化率

 さて、このように、間欠的にテリパラチドを投与した結果、どのような臨床効果が得られているのでしょうか? まず骨量増加効果について、わが国で行われた臨床試験の結果では、テリパラチド20μg1日1回の投与により、腰椎骨密度が12ヵ月で10%、24ヵ月投与で13%増加しました。大腿骨近位部骨密度もそれぞれ2.7%、3.7%増加しました。これは米国で行われた臨床試験結果と同等です。
 この試験では、骨形成マーカー、骨吸収マーカーの推移も検討されています。骨形成マーカーP1NPは、テリパラチド投与により、1ヵ月後に87%上昇し、12ヵ月まで、有意差を持ってプラセボ群より高値でした。一方、骨吸収マーカーであるCTXは、骨形成マーカーの立ち上がりに遅れ、3ヵ月から上昇を認め、その後12ヵ月まで有意差をもってプラセボ群より高値でした。このように、本剤投与により、より早期に骨形成が促進されていることがわかります。

icon テリパラチドの骨折予防効果

 骨粗鬆症治療の目的は、骨折を予防することにほかなりません。テリパラチドによる治療では、優れた骨折予防効果が示されています。

テリパラチド骨折予防試験=新規椎体骨折発生率

 骨折発生抑制効果の検討は米国で臨床試験が行われました。1637例の閉経後骨粗鬆症患者に対して19ヵ月(中央値)にわたりテリパラチド20μgを1日1回投与した結果、新規椎体骨折リスクは65%低下し、さらに中等度または重度の新規椎体骨折リスクは90%も低下しました。

テリパラチド骨折予防試験=2個以上の骨折発生率

 この試験では、大腿骨、橈骨、足関節、上腕骨などの、椎体以外の骨折、いわゆる非椎体骨折の相対リスクも、テリパラチド20μg群では、プラセボ群に比べて、53%抑制することが明らかとされています。有害事象に関して、これまでの臨床試験結果では、注射局所の反応を除いて、プラセボ群とテリパラチド群との間に有意な差は認められていません。骨粗鬆症治療薬は、破骨細胞による骨吸収を抑制する“骨吸収抑制剤”と、骨芽細胞による骨形成を促進する“骨形成促進剤”とに分けられると説明しました。これまでわが国で用いられてきた薬剤は骨吸収抑制剤が主でしたので、このテリパラチドは、わが国で最初の骨形成促進剤となります。骨形成を促進するということは、骨の量を増やすのみでなく、骨の質、“骨質”の改善に効果的といえます。これまでの骨吸収を抑える薬は、骨の新陳代謝を抑えることになりますので、古い骨が蓄積する傾向にあります。しかし、テリパラチドは、骨の新陳代謝を盛んにし、積極的に新しい骨を作ることができますので、骨質を改善するものと考えられます。最近、骨の微細損傷であるmicro-damageが、テリパラチド投与によって減少することが、骨粗鬆症患者の腸骨生検組織で確認されています。したがって、この薬剤は、骨密度の増加効果に優れているのみでなく、骨質についても、まさに、これまでにない効果が認められているのです。

 

提供 : 株式会社スズケン



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