癌研有明病院 血液腫瘍科 部長
畠 清彦
本日は、再発及び不応性の多発性骨髄腫の治療薬、レナリドミド水和物についてお話をしたいと思います。
多発性骨髄腫の治療戦略とレナリミドの登場
これまで、多発性骨髄腫の治療戦略としては、日本では経口でメルファランとプレドニゾロンの併用(MP療法)、またはビンクリスチン、アドレアマイシンとデキサメタゾンの併用による点滴注射治療(VAD療法)が主流でありました。
そこに、今から4年前にプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブが注射薬として出ました。その後、画期的に成績は向上しましたが、まだ欧米に比べ承認されている薬が少ないことが問題になっておりました。

このたび、レナリドミドは、再発及び不応性の多発性骨髄腫の経口薬として承認されることになりました。これは第二選択薬として使われることになっております。まだ、レナリドマイドはデカドロンとの併用のみが認められており、ほかの組み合わせ等は使うことができません。適応症は、この薬剤に使う場合には第一選択として先ほど申しましたMPまたはVAD療法その他の治療により不応性または再発した患者であります。
一般に多発性骨髄腫は、1800年代後半に発見され、M蛋白という血液中の異常蛋白によって診断されました。そのほかに骨髄には、形質細胞という異常細胞がふえていることが特徴です。放置すると、数年の間に腎臓障害や骨髄浸潤による貧血、そして高カルシウム血症により、骨が壊れることによって起こる骨折などの合併症により亡くなることが多くあります。
これまで、日本では適切な標準治療がありませんでした。そして、プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブが承認されてからも、ボルテゾミブでは間質性肺炎が問題になる、あるいは疲労や、使用により効果は出てくるものの、末梢神経障害により使用できなくなる患者もありました。

レナリドミド水和物は経口薬であり、1日5mgのカプセルを5カプセル飲むことを適用として、21日間服用し、1週間休薬することが認められております。もちろん病状により、例えば腎障害によっては20mgまたは15mg、透析中であれば10mgに減量することなどが必要となります。この薬剤はカプセルで、1錠8,861円しますが、欧米に比べると約10%安くなっています。
特徴として、4週間、すなわち1サイクル投与によって奏効する患者が60%を占めております。したがって、1カ月目に効果がわかることになります。

また、サリドマイドに比べますと、同系統の薬ではありますが、副作用が少なくなっているのが特徴です。特に末梢神経障害が非常に少なくなっていますが、逆に血栓症の合併が多くなっています。
欧米では、血栓傾向のある方が多いこともあり、下肢の静脈血栓症、そこから及ぶ肺血栓などが問題となります。日本でもその危険性があることから、臨床試験中も抗血小板薬アスピリンが併用されました。したがって、この薬剤使用時にはアスピリンを合併症防止のために使うことが必要となります。

このレナリドミドは国際的には従来から使用されており、既にファーストライン、すなわち日本と違って最初から使用できる薬剤となっています。特にアメリカNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインでは、多くの併用療法が認められており、場合によっては脱毛もない、またはもっと早くに効果が出るという併用も行われています。日本では今後、臨床試験を経て、ファーストラインで使われるようになると考えますが、もうしばらく時間がかかると思います。
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