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<スズケンDIアワー> 平成22年12月2日放送内容より スズケン

単回吸入抗インフルエンザ薬 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物


東北大学 加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門 教授
渡辺 彰

icon 新しい抗インフルエンザ薬の登場

抗インフルエンザ薬の化学構造式

 さて、本年、2つの薬剤が実用化されて保険も承認されました。製品名で言いますと、ラピアクタとイナビルの2つです。いずれも、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼに作用してその活性を抑える薬剤であり、作用機序としてはタミフルやリレンザと同じということになりますが、剤型や用法・用量が大きく異なり、そこにこれらの薬剤の有用性があると考えています。
 本年1月新発売のラピアクタは点滴静注薬であって、しかも、基本的に1回の投与で治療目的を達成できることが最大の特徴です。ですから、この薬剤は、嘔吐や下痢が強くてタミフルが飲めないような例、リレンザが吸入できないような例に適応が高く、また、点滴静注で確実に吸収されることから、インフルエンザの重症例や、基礎疾患並びに合併症が高度なハイリスク例であっても確実な効果が求められる薬剤であると考えています。
 本年10月には、単回吸入投与の抗インフルエンザウイルス薬であるラニナミビルオクタン酸エステル水和物(製品名イナビル)が新発売されました。これは、新規のノイラミニダーゼ阻害薬ですが、活性体であるラニナミビルをプロドラッグ化したことにより、インフルエンザウイルスが増殖する場の気道や肺に高い濃度で分布するようになったお薬です。分布した後は速やかに活性体に変換いたしますが、活性体自体はその場に長時間残存してゆっくり消失する、という大きな特徴を持っています。その結果、同じ作用機序のオセルタミビルやザナミビルと比べて作用が長時間持続することとなります。
 マウスの実験でイナビルの局所動態が検討されていますが、本剤の投与後に生じた活性体は、41.4時間という長い半減期でゆっくりと消失いたしました。すなわち、気道局所に長時間存在し、さらに作用部位であるインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼへの結合が強くて解離が遅いことから、作用は長時間続くことになります。健常成人における臨床薬理試験、すなわち臨床第一相試験では、単回投与の6日後でも活性体が血漿中に検出されて長時間貯留することが確認され、一方で、安全性に問題のないことも確認されています。
 以上のような特性からイナビルは、抗インフルエンザ薬で懸念される症状改善による服薬中断の心配もなく、1回だけ投与して治療目的を達成できる服薬コンプライアンスが100%の抗インフルエンザウイルス薬である、と特徴づけることが出来ます。しかも、1回だけの吸入製剤ですから、外来での処方が簡便であり、病院や医院、及び調剤薬局で服薬指導を行った後のその場での服薬の完了も可能です。なるべく早く投与することが必要なインフルエンザ患者にとっては大きなメリットであると考えられます。また、吸入容器も簡便で、既に薬剤が充填されていて事前操作も不要なので、服薬にかかる手間の軽減が期待できる製剤です。
 基礎的検討では、H3N2香港かぜウイルスやH1N1ソ連かぜウイルスに対してイナビルはタミフルやリレンザとほぼ同等の活性を示しました。さらに、タミフル耐性H1N1ソ連かぜウイルスにも感受性ウイルスに対するのとほぼ同等の抗ウイルス活性を示しました。また、昨年来出現したいわゆるH1N1パンデミック新型ウイルス株に対してもイナビルは強い活性を示し、新型インフルエンザウイルス感染マウスにおける単回投与による治療実験でも、複数回投与のタミフルやリレンザより強い抗ウイルス作用が確認されています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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