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<スズケンDIアワー> 平成23年2月3日放送内容より スズケン

トロンボポエチン受容体作動薬 エルトロンボパグオラミン


大阪大学附属病院輸血部 病院教授
冨山 佳昭

icon エルトロンボパグの開発

 これら第一世代のTPO製剤の開発は中止となりましたが、中和抗体誘導の問題を克服し、さらに利便性のよい製剤を開発するため、TPOそのものではなくTPOの受容体を活性化させ血小板を増加させる薬剤の探索が進められ、第二世代の薬剤としてTPO受容体作動薬エルトロンボパグが開発されたわけです。

エルトロンボパグのフロチャート

 エルトロンボパグは分子量546ダルトンの小さな非ペプチド化合物であり、初めての経口製剤です。一方、もう1つのTPO受容体作動薬ロミプロスチムは皮下注射製剤です。どちらの製剤ともTPOとの相同性はありません。
 エルトロンボパグはヒトおよびチンパンジーのみに有効で、マウス、ラット、カニクイザルに対する作用はありません。ヒトとカニクイザルのTPO受容体の解析より、TPO受容体のN末端付近にTPOが結合するのに対して、エルトロンボパグは膜貫通領域に結合し、その作用を発揮することが明らかにされています。
 エルトロンボパグの血小板増加作用は、早くて1週間後、最大効果は2週間後に発現するため、緊急時に血小板数を増加させることはできません。そこで、エルトロンボパグの適応疾患として、特発性血小板減少性紫斑病が注目されました。特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)について簡単に解説しますと、ITPは血小板に対する自己抗体により血小板が早期に脾臓を中心とした網内系にて破壊され血小板減少をきたす自己免疫疾患と考えられています。ITPは特定疾患に認定されており、厚生労働省の「血液凝固異常症に関する調査研究」班の解析では、本邦におけるITPの患者数は約2万人と推計され、年間約3000人が新たに発症しています。


血中トロンボポエチン濃度

 血小板減少症の病態を解析するため、血小板の破壊が亢進しているITP群と逆に血小板の産生が低下している再生不良性貧血群や化学療法後の血小板減少症群において、血中TPO濃度を測定しました。ITP群では血中TPO濃度は、正常か、わずかな増加を示したのに対し、血小板産生低下群では、TPO濃度が異常高値を示しました。この成績は、ITP群においてTPO受容体を刺激すれば血小板数が増加する可能性を示唆しています。一方、血小板産生低下群では、すでにTPO濃度が上昇しているため、エルトロンボパグの効果は期待できないことがわかります。ITPでは、さきほど述べたように血小板破壊亢進が主たる病態です。若干話しは複雑になりますが、ITPでは血小板抗体により、巨核球の成熟障害や細胞障害を生じており、血小板産生も若干抑制されていることが示されています。このことはITP群において、TPO濃度が僅かに増加している症例が存在することと合致しています。
 ITPの主要な症状としては、皮下出血、歯肉出血、鼻出血、性器出血など皮膚粘膜出血が挙げられます。血小板数が1万/μL以下になると、さらに血尿、消化管出血、網膜出血を認めることもあります。高度の粘膜出血を認める場合は、消化管出血や頭蓋内出血をきたす危険があり、入院など早急な対応が必要となります。

 

提供 : 株式会社スズケン



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