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<スズケンDIアワー> 平成23年2月3日放送内容より スズケン

トロンボポエチン受容体作動薬 エルトロンボパグオラミン


大阪大学附属病院輸血部 病院教授
冨山 佳昭

icon ITPの治療

 さて、ITPの治療に関しては、厚生労働省の調査研究班が作成した「ITP診療の参照ガイド」が参考になります。現在その細部を改訂作業中です。

ITP診療の参照ガイド

 血小板数の正常値は13万〜32万/μLですが、重要なのは、ITPでの治療目標は血小板数を正常化させることではなく安全な血小板数を維持することです。日常生活における目標血小板数は3万/μL以上となります。
 ITPと診断し、H.Pylori感染が認められる場合、緊急性がなければ、まずH.Pylori除菌療法を試みます。除菌療法が奏効しない場合、次にfirst lineの治療を試みます。この場合、血小板数に加えて出血症状の有無が治療開始の判断となります。一般的には血小板数2万以下で治療の対象となりますが、血小板数が3万/μL以上あり、皮下出血などの出血傾向が明らかではない場合は、直ちに治療を開始する必要はなく経過観察で充分です。
 First lineの治療としては、副腎皮質ステロイドおよび脾臓摘出術が挙げられます。副腎皮質ステロイドは、網内系における血小板の貪食および血小板抗体の産生を抑制しますが、一般的にはプレドニゾロンを体重あたり0.5mg〜1mg投与します。50〜75%の症例において血小板数が増加しますが、多くはステロイド減量に伴い血小板数が減少してしまいます。4〜6週間投与後、血小板数の増加がなくても副作用を考え徐々に減量していき、維持量として1日5mg〜10mgを投与します。
 ステロイドの維持量にて血小板数3万/μL以上を維持できない症例やステロイドの副作用が顕著な症例は、発症後6か月が経過していれば積極的に脾臓摘出術を考慮します。脾臓が血小板破壊の主たる臓器であり、また血小板抗体の産生臓器でもあるためです。脾臓摘出により約60%の症例で血小板数が正常化します。


icon エルトロンボパグの適応

 上記のfirst line治療が奏効せず、血小板数が3万/μL以上に増加しなかった場合、second lineの治療が必要となります。難治性ITPは全体の5%前後と考えられますが、このような難治例に対してエルトロンボパグが適応となります。また、副腎皮質ステロイドの忍容性が低い場合や、脾臓摘出ができない症例に対してもエルトロンボパグの適応となります。

Eltrombopagの効果

 血小板数が3万/μL未満の治療抵抗性ITP症例を対象とした治験では、その有効率は80%と良好でした。興味深いことに、欧米人ではエルトロンボパグの1日投与量の平均は60mg弱でしたが、日本人に対しては平均35mgと、より低用量で効果が得られることが明らかとなりました。この結果を受け、エルトロンボパグは欧米では25mg、50mg、75mgの用量が設定されているのに対し、本邦では12.5mg、25mg、50mgの用量設定となっています。繰り返しになりますが、ITP患者においても最大効果は2週間後に発現しています。そのため、本邦ではエルトロンボパグの投与は必ず12.5mgから始め、2週間は同一用量で観察する必要があります。

トロンボポエチン受容体作動薬において予想される副作用

 幸いTPOとは異なり、現在のところエルトロンボパグに対する中和抗体の出現は報告されていません。しかしながら、エルトロンボパグは血小板造血刺激剤であるため、血小板増加に伴う血栓の誘発、治療中止後の血小板減少の増悪、骨髄線維症など骨髄異常の誘発、血液幹細胞の枯渇など、種々の副作用の可能性があり長期的な安全性はまだ確立していません。今後注意深い使用成績調査が必要です。難治性ITPに限定した適正使用をお願いしたいものです。

 

提供 : 株式会社スズケン



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